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「下請け先の資本金額に注意」
「勧告事案は事業者名公表も」

中部経済新聞2018年3月掲載
「下請け先の資本金額に注意」
「勧告事案は事業者名公表も」

公正取引委員会が、コンビニエンスストアや弁当販売業で、下請法違反があり、是正を勧告したと聞いたよ。下請法って製造業が対象というイメージがあるけれど、小売業も対象になるのかい。
下請法は、小売業も対象になりますよ。
えっ、そうなんだ。それなら、当社も対象になるね。下請法について教えてくれないかな。
下請法は、親事業者と下請事業者との取引を公正なものとするために、親事業者を規制し下請事業者の利益を保護する法律です。
どんな会社が親事業者に当たるの。
下請法の規制対象となる取引は、製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託の4つですが、例えば、製造委託の場合、資本金一千万円超3億円以下の会社が、資本金一千万円以下の会社に物品の製造を委託する場合(又は、資本金3億円超の会社が、資本金3億円以下の会社に物品の製造を委託する場合)、発注者が親事業者、受注者が下請事業者となります。
親事業者に当たるか否かは、発注者と受注者の資本金によるんだね。
その通りです。下請法により、親事業者には4つの義務が定められており、また、11の禁止事項があります。
親事業者には、例えば、どんな義務があるの。
親事業者には、例えば、発注書面の交付義務があります。
でも、契約は口頭で成立するんだよね。口頭発注がなぜダメなの。
口頭発注は、発注内容や支払条件が不明確でトラブルになりがちで、下請事業者が不利益を受けることが多いからです。
親事業者の禁止事項には、例えば、どのようなものがあるの。
例えば、あらかじめ定めた下請代金を、下請事業者に責任がないのに、発注後に減額することは禁止されています。
近時の事例でも、フランチャイズシステムによるコンビニエンスストア事業を営む親事業者が、消費者に販売する食料品の製造を下請事業者に委託し、「商品案内作成代」「新店協賛金」を下請代金の額から差し引いていたことから、下請代金の減額に該当するとして、公正取引委員会から勧告を受けました。
えっ、そうなの。協賛金を支払ってもらうのと、下請代金の減額とは別だから差し引いても問題ないと思っていたけれど。委託先とあらかじめ協賛金の支払を合意していても、違法なのかい。
その通りです。協賛金名目であっても下請代金から差し引くことは減額に該当しますし、下請事業者とあらかじめ合意していても違法です。
下請事業者とあらかじめ合意していてもダメなのはなぜなの。
下請事業者は一般的に親事業者に対して立場が弱く、協賛金支払の要求を拒否することは困難だからです。
でも、例えば新店オープンセールの原資として協賛金を支払ってもらう場合、商品が良く売れることが期待できるので、下請事業者にも利益があると思うけど、それでもダメなの。
違法です。協賛金名目で下請代金を減額されると、直接、下請事業者の利益が損なわれると考えられるからです。
ずいぶん厳しいんだね。当社も気を付けなければならないね。
平成28年12月に、13年振りに下請法に関する運用基準が改正されました。知らない間に、下請法違反にならないよう、ぜひ気を付けてください。
下請法違反の勧告を受けるとどうなるの。
例えば、協賛金の名目で下請代金の減額を行っていた場合、違反行為のとりやめと、当該減額分を下請事業者に速やかに支払うこと等の原状回復措置等が勧告されます。また、公正取引委員会が勧告した場合、原則として事業者名、違反事実の概要、勧告の概要等が公表されます。
社名や違反事実、勧告の概要が公表されるんだね。当社の信用にもかかわるなあ。
そうですね。下請法を理解し、違反を未然に防ぐ取組が重要です。
でも、下請法は難しいね。担当者が下請法を知らず、違反という認識がないまま、取引先に協賛金の支払を要請し、下請法違反と言われてしまうと困るなあ。
例えば、社内で講習会を実施し、担当者に受講させ下請法を理解させることで、違反を未然に防止できるのではないでしょうか。
わかったよ。当社でも下請法講習会を実施するよ。ついては、先生に講師をお願いしたいんだけど、引き受けてくれるかい。
ぜひ、お任せください。