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知財仲裁センターのご案内 ~弁護士,弁理士がペアで仲裁~

中部経済新聞2017年11月掲載
知財仲裁センターのご案内 ~弁護士,弁理士がペアで仲裁~

今日は何の相談ですか。
実は、最近ライバル会社が弊社の製品と似た物を作って販売を始めたとの情報が入ったのです。
御社の製品は特許を取得できるものは取得しているはずですよね。
この製品についても特許は取れています。それで、先日特許侵害の疑いがあるということで警告書を送ったのですが、相手方から、相手方の製品は一部特許公報の記載と異なる点があり侵害ではない、また、弊社の特許権には無効理由がある、という内容の返事が返ってきたのです。
特許公報はこれですか。なるほど、特許公報の特許請求の範囲欄には「安全ピンをピンに固定する」と書いてあるけど、相手はボルトを使っているから違うという言い分ですか。
そうです。
なるほどね。しかし、ピンとボルトの違いというだけで非侵害になるのか疑問ですね。また、この違いは特許のキモになる部分ではないので、均等論の余地もありますね。無効理由について相手は何か主張しているのですか。
違う技術分野の特許公開公報を複数指摘し、これらを組み合わせれば進歩性はないと言っています。
この無効理由について、弁理士さんの意見はどうですか。
よく調べたね、とは言っておられましたが、技術分野が違うし、この資料のみでは容易相当性はないのではないかと言っておられました。ただ、これから相手が更に調査を進めると何か新たな無効資料が出てくる可能性はあるとは言っておられました。
なるほどね。侵害論・権利無効論ともに争点にはなりえるね。いずれにしても、相手もそれなりに調べた上で回答してきている以上、このままでは事態は改善されないね。これは裁判するしか無いと思いますよ。
やはりそうですか。ちなみに、裁判をするとなると、費用は結構かかるのでしょうね。
相手の製品が御社の特許権の技術的範囲に属するか否かという問題と、権利無効が争点になりますから、弁理士さんと、一緒に戦うことになりますね。
費用がダブルになるということですか。
それだけでなく、侵害訴訟を起こすと相手は特許庁に無効審判を起こしてくることが多いので、そちらの手続きでも戦うことになりますね。
ダブルのダブルですか。
それと、裁判は名古屋地裁ではできないので、東京地裁に行く必要があります。相手方の製品が関西エリアでも販売されているのであれば、大阪地裁でも可能です。
新幹線代や日当もダブルですよね。
そうなります。特許訴訟はあれこれ調査も必要ですし、体力勝負という一面もあるのです。
実は、この製品は特殊な製品で、一部のユーザーしか使えない製品なのです。それで、あまり数も売れておらず、そんなに大きな費用を掛けたくはないのです。
そうですか。しかし、その事情は相手も同じでしょうね。
相手は弊社よりも規模がさらに小さいので、相手も戦うのは大変だと思います。ただ、利益は出ていませんが、このまま何もしないというのでは開発した社員の士気に関わります。せめてロイヤリティなりを払ってもらわないと社内がおさまりません。
そういう事情なら、知財の仲裁センターを使ってみますか。
何ですか、それ。
特許裁判など知的財産権に関する紛争について、弁護士と弁理士があっせん仲裁人となって、まずは話合いにより紛争を解決する手続きです。
前に親父の相続のときに、家庭裁判所で調停をしましたが、あれと似たものですか。
そうです。日本弁護士連合会と日本弁理士会が共同して運用している制度で、専門的知識を有する弁護士と弁理士がペアを組んで話し合いを進めるのです。双方が了解すれば、仲裁裁定も書いてくれます。
そちらの手続きは、費用については安くすむのですか。
裁判をするよりは安く済みます。また、この手続であれば、名古屋でできますので、交通費はかかりません。家裁の調停と同じで相手が断る自由はありますが、この事件なら相手も断らないと思いますよ。
では取りあえずその手続きをお願いできますか。
分かりました。早速準備します。