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介護休業と介護休暇 取得しやすい制度に改正

中部経済新聞2016年11月掲載
介護休業と介護休暇 取得しやすい制度に改正

社長 今、うちで働いている契約社員が産休中なんだけど、来年、産休が終わった後も育休を希望しているようなんだ。契約社員でも育休は取れるものなの。
弁護士 ちょうど育休などについて規定した介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)が改正されたところで、来年(平成29年)の1月から、制度が少し変わることになりました。
社長 どのように変わるんだい。

【契約社員と育休】

弁護士 いわゆる契約社員のような、期間を定めて雇用されている労働者(有期契約労働者)が育児休業をする場合、これまでは、①申出時点で過去一年以上継続して雇用されていること、②子が一歳になった後も雇用継続の見込みがあること、③子が二歳になるまでの間に更新されないことが明らかでないことが条件とされていました。これに対して、改正後は、①の条件のほか、②子が一歳六か月になるまでの間に更新されないことが明らかでないこと、の2条件で足りることになりました。
社長 なるほど。うちの契約社員は1年以上継続して働いてもらっているし、今後も契約を更新する予定なので、申出があったら認めなければならないんだね。

【子の看護休暇】

弁護士 他にも改正された制度がありますのでご説明しますね。 まず子どもが小学校就学前の場合には、日々雇用される労働者を除き,原則として全ての労働者が,その子が病気、けがをした際の看護や予防接種、健康診断を受けさせるために休暇(子の看護休暇)を取ることができます。この看護休暇は1年で5日間取得できるのですが、これまでは、一日単位でしか取得できませんでした。この点も改正によって、半日単位で取得できるようになりました。
社長 午前中、病院に連れて行って、午後から出社することが認められるということかな。
弁護士 そうです。これまでは午後から出社できる場合であっても1日で計算されるため、1年で5回しか看護休暇を取ることができませんでした。改正後は、半日の休暇であれば、1年で10回取ることができます。
社長 なるほど。

【介護休業】

弁護士 最近は育児だけでなく、介護と仕事の両立も社会問題化していますが、今回、介護制度についても変わります。まず、介護休業が分割取得できるようになりました。
社長 介護休業ってのはなんだい。
弁護士 介護休業というのは、要介護状態(けがや病気又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)の家族を介護するための「休業」です。従前は、介護を必要とする一人の家族に対して、通算93日まで、原則1回に限り取得が可能でしたが、改正後は、通算93日まで、3回まで分割して取得することが可能になりました。
社長 特に介護が必要な時期を選んで、40日、30日、23日というように分割して取得できるようになったんだね。
弁護士 そうです。なお,契約社員が介護休業を取得できる取得要件も,育児休業同様,今回の改正で緩和されることになります。

【介護休暇】

弁護士 更に、介護休暇についても、従前は一日単位での取得とされていたのが、改正後は半日単位での取得が可能になりました。
社長 介護休暇というのは、介護休業とは違うのかい。
弁護士 介護休暇というのは、要介護状態にある家族の介護その他の世話のために取ることが出来る休暇で、一年に5日まで取得が可能です。先ほどの看護休暇同様,日々雇用される労働者を除き,原則として全ての労働者が取得できるものです。

【選択的措置義務】

弁護士 他にも、事業主は、要介護状態にある家族の介護をする労働者に対して、①所定労働時間の短縮措置、②フレックスタイム制度、③始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ、④労働者が利用する介護サービス費用の助成その他これに準じる制度のいずれかの措置を選択して講じなければならない(選択的措置義務)とされています。この選択的措置について、従前は、介護休業と通算して93日の範囲内で取得が可能でしたが、改正後は、介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用が可能となりました。

【残業免除】

弁護士 さらに、改正により介護が必要な家族一名につき、介護の必要がなくなるまで、残業の免除が受けられる制度が新しく設けられました。
社長 なるほど。介護の制度も、今回の改正でかなり充実したね。これからは仕事をしながら、家族の介護をしなければならないケースも増えてくるだろうから、会社としてもしっかり制度を利用できるよう準備しないといけないね。

【就業環境について】

弁護士 そうですね。ただ、社員の中には、育児休業や介護休業を取得することをおもしろく感じない人がいるかもしれません。この点についても法改正がありました。
社長 どんな内容なの。
弁護士 事業主が、妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由として、解雇その他の不利益な取扱をすることは従前より禁止されていましたが、改正後は、これに加え、事業主は、上司・同僚などが職場において、妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする就業環境を害する行為をすることがないよう防止措置を講じなければならないとされました。
社長 防止措置というのは、どういうことをしたらいいんだい。
弁護士 労働者への周知・啓発や相談体制の整備等が考えられます。
社長 なかなか難しいな。就業規則の改正も含め、育児や介護に対する会社の考え方を見直す必要がありそうだな。体制を整えたいから相談に乗ってよ。
弁護士 もちろんです。