愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > ライブラリー > 中部経済新聞2016年04月掲載
おとり広告による不当表示

中部経済新聞2016年04月掲載
おとり広告による不当表示

社長 ちょっと聞いてくれよ、今朝の家電量販店のチラシに新型パソコンが激安価格で限定3台販売されるのを見つけて、朝から家の近くの店舗に並んだのに、「申し訳ありませんが当店舗ではそのパソコンは取り扱っておりません」と言われ、買えなかったんだよ。取扱いのない店舗があるなんてチラシに書いてなかったから頭にきたよ。
弁護士 それは景品表示法第4条第1項第3号の規定に基づく告示の「おとり広告に関する表示」に該当する不当表示ですね。
社長 おとり広告か。確かに激安価格の新型パソコンは買えなかったけど、せっかく来たからと思って乾電池を買って帰ってきたよ。まさにおとりに引っかかったというわけだ。具体的にはどんな場合がおとり広告になるの。
弁護士 これからお話します4つの類型の表示が、商品・サービスが実際には購入できないにもかかわらず、購入できるかのように誤解させて顧客を誘引するおとり広告にあたるものとして禁止されています。

①取引の申出に係る商品・サービスについて、取引を行うための準備がなされていない場合のその商品・サービスについての表示

弁護士 すでに売却済みで販売できない商品を広告で表示したり、今回のように複数店舗での販売を一つの広告で行う場合に、広告に掲載された店舗の一部に広告商品を取り扱わない店舗がある場合はこれに該当します。チラシに掲載した商品を取り扱わない店舗がある場合には、その店舗名を明記する必要があります。

②取引の申出に係る商品・サービスの供給量が著しく限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品・サービスについての表示

弁護士 「供給量が著しく限定されている」とは、広告商品等の販売数量が予想購買数量の半数にも満たない場合をいいますが、その場合には販売数量を明瞭に記載する必要があります。
社長 「在庫限り」とか「売り切れご容赦」という表示をすることはどうなの。
弁護士 それでは販売数量を明瞭に表示しているとは言えません。
社長 今回のように一つの事業者が複数店舗での販売を一つの広告で行う場合にはどうやって記載するの。
弁護士 原則として、店舗ごとの販売数の明記が必要ですが、チラシ等のスペースの都合により店舗ごとの販売数を明記することが困難な場合には、当該チラシ等に記載された全店舗での総販売数に併せて、店舗により販売数が異なる旨と、全店舗のうち最も販売数が少ない店舗での販売数を表示する必要があります。

③取引の申出に係る商品・サービスの供給期間、供給の相手方又は顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない場合のその商品・サービスについての表示

弁護士 この場合には、販売日や販売時間等の販売期間、販売相手の条件、顧客1人当たりの販売数量を広告に示す必要があります。
社長 確かに「お一人様3個まで」とかチラシに書いてあるなあ。

④取引の申出に係る商品・サービスについて、合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われる場合その他実際には取引する意思がない場合のその商品・サービスについての表示

弁護士 広告商品等を顧客に対して見せなかったり、表示した役務の内容を顧客に説明することを拒む場合や広告商品等に関する難点をことさら指摘する場合などがこれに該当します。
社長 「合理的理由」がある場合ってどんな場合なの。
弁護士 事業者が売り手として広告等により商品の取引を申し出ているにもかかわらず取引を拒むことについての合理的理由ですから、未成年者に広告商品である酒類を販売しないなど限定的な場合に限られます。
社長 規定に反しておとり広告にあたる不当表示を行なった場合はどうなるの。
弁護士 行政から不当表示により一般消費者に与えた誤認の排除、再発防止策の実施、今後同様の違反行為を行わないことなどを命ずる措置命令が発せられます。
社長 広告を出すにも色々と規制があるんだね。うちの会社も広告を出すことがあるから今後は気をつけるよ。