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違憲の安保法制 立憲主義を蹂躙 ~3月19日に反対集会

中部経済新聞2016年03月掲載
違憲の安保法制 立憲主義を蹂躙 ~3月19日に反対集会

社長 なんか忙しそうだね。
弁護士 今週の土曜日(19日),弁護士会が主催して「違憲の安保法制の廃止に向けて立憲主義の回復を求める愛知大集会・パレード」を行うんですよ。その準備です。
社長 安保法制って,昨年,国会で決議されちゃったじゃない。今更パレードするの?
弁護士 違憲無効の法律をそのままにはしておけません。廃止に向けて活動するのみです。
社長 前にも聞いたかもしれないけど安保法制の何が問題なの?
弁護士 最大の問題は「立憲主義」が害されていることです。
社長 立憲主義?
弁護士 以前もお話ししましたが,国家権力は,国民の自由や財産といった大切なものを侵害する危険が高いものです。例えば,政府を批判する言論を禁止するという表現の自由に対する侵害が行われたら,言いたいことを言えなくなって困りますよね。それを「憲法」という法を「国家権力」に守らせることによって,その危険から国民を守ろうとする仕組みが立憲主義です。
社長 思い出した。「憲法」は,他の法律と異なり,「国家権力」が守るべき法律だったね。
弁護士 そうです。憲法は,国家権力から侵害される危険性がある,国民の自由や基本的人権,平和主義といった普遍的な価値を規定しているのです。戦後歴代内閣は憲法の理念に従って集団的自衛権の行使を認めてきませんでしたが,安保法制はこれを認容する内容であり,明らかな憲法違反です。内容についても,新たに自衛隊が武力行使できる場合として「存立危機事態」という概念を規定していますが,そもそもこの概念自体が不明確であり,その時々の政府の判断により自衛隊の海外での武力行為を認めることになりかねず,武力行使を容認する場面が際限なく広がっていくおそれは極めて大きいと言えます。他にも,日本周辺に限らず地理的な制約なしに自衛隊が米軍その他の外国軍に対する後方支援を行うことを可能とし,他国軍隊の武力行使と一体とならざるを得ない場面も生じさせる可能性があります。憲法が禁止する海外での武力行使に道を開くものです。
社長 そんな法律だったのか。全然知らなかったな。
弁護士 安保法制に対しては,弁護士会はもとより,大半の憲法学者,元最高裁長官や元最高裁判事,元内閣法制局長官ら法律の専門家が憲法に違反すると警告していました。
社長 そういえば,政府が参考人として呼んだ憲法学者も違憲だと言っていたね。でも,このご時世,集団的自衛権は国を守るためには必要なんじゃないの?
弁護士 だからこそ,「国民」を主体とした憲法的な議論が必要だということです。 現行の憲法は集団的自衛権を容認するものではありません。国を守るためにどうしても集団的自衛権を容認する必要があると「国家権力」が主張するのであれば,国家権力が守るべきルール(憲法)に従って,国民投票を要件とする憲法改正の議論をすべきだということです。
社長 なるほど。集団的自衛権が本当に必要なのかどうか「国家権力」の立場にある政府や国会ではなく,直接我々「国民」が決めるべきだということだね。
弁護士 おっしゃるとおりです。ところが,社長も安保法制の内容をあまりご存じでなかったように,そもそもこの法律はどういう危険があるのか,集団的自衛権とはどのようなものなのか,国民の理解は全く得られていません。世論調査でも,約8割が政府・与党の説明が不十分と回答していました。政府・与党等の賛成派は,反対派の意見を聞くこともせず,国民の理解を得ることもなく,衆議院,参議院で多数の議席を有していることを利用して強行採決してしまったのです。
社長 確かに国民的な議論がないままに強引に成立させたことは間違いないね。
弁護士 そうです。国民主権の観点からも重大な禍根を残すものですし,立憲主義を蹂躙する最たるものです。
社長 いつにも増して熱いね。
弁護士 時間が経てば反対意見が収まると思われてはいけません。憲法違反の法律を一日も早く廃止させるためにも,粘り強く活動し続けなければ!
社長 よし,分かった。私もそのパレード,参加するよ!