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【ちょっとお得】 仏壇、墓地、位牌は「祭祀承継者」が決める

中部経済新聞2016年2月掲載
【ちょっとお得】 仏壇、墓地、位牌は「祭祀承継者」が決める

【質問】

父が亡くなりました。私は二男ですが父の生前は同居しており,仏壇は私の家にありますし,先祖代々の墓は私の家の近所にあります。東京に住んでいる長男が仏壇や墓地を東京に移すと言っていますが私は反対です。どうしたらよいでしょうか。

【回答】

家庭裁判所に祭祀(さいし)承継者指定の調停を申し立てられるとよいでしょう。仏壇,墓地,位牌等のことを法律では「祭祀財産」と言います。祭祀財産は,相続財産とは別個の財産として特定の者に受け継がせることになっています。祭祀財産を受け継ぐ者を「祭祀承継者」と言います。仏壇や墓地をどうするか決めることができるのは祭祀承継者ですので,あなたとお兄さんのどちらが祭祀承継者なのかが問題となります。

  • 【被相続人による指定】
    まず,被相続人が祭祀承継者を指定していた場合にはその指定された者が祭祀承継者となります。祭祀承継者の指定は生前に行なうだけでなく,遺言によることも可能です。また,指定は口頭,書面,明示,黙示のいずれによっても,指定の意思が外部から推認されればよいとされています。
  • 【慣習】被相続人の指定がない場合は慣習に従って決めます。この慣習とはその地方の慣習や被相続人の出身地の慣習,職業特有の慣習などを言いますが,争いになった場合は慣習が明らかでないとして次に説明する家庭裁判所による指定が行なわれることがほとんどです。
  • 【家庭裁判所による指定】
    祭祀の承継者が誰か争いになった場合は,家庭裁判所の調停や審判で指定されます。家庭裁判所は承継候補者と被相続人との身分関係や事実上の生活関係,承継候補者と祭祀財産の場所的関係,祭祀財産取得の目的,管理等の経緯,承継候補者の祭祀主宰の意思や能力,その他一切の事情を総合して判断すべきとされています。祭祀は義務ではなく死者に対する慕情,愛情,感謝の気持ちといった心情により行われるものですから,被相続人と密接で親和的な関係にあり,その様な気持ちが強い者,被相続人が生存していればおそらく指定したであろう者が選ばれることになります。