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中部経済新聞2015年2月掲載
離婚時の財産分与について
中部経済新聞2015年2月掲載
離婚時の財産分与について
先生、実は息子が財産分与調停ってのを申し立てられたみたいなんだよ。 | |
息子さん、離婚したんですか。 | |
そう。元妻から、すぐ離婚してくれと離婚届を突きつけられて、話し合った結果、息子も判を押したんだ。元妻も家を出ていって、万事終わったと思っていたのに...。財産分与ってそもそも何だい。 | |
財産分与とは、離婚した夫婦の一方が、他方に対して、夫婦が婚姻期間中に形成した財産の分与を求めるものです。夫婦の共有名義の財産ではなくても、婚姻中に夫婦の協力によって形成された財産であれば、夫や妻の単独名義の財産でも分与の対象になります。一方、親から相続した財産等、夫婦の協力によって形成されたといえない財産は、原則として対象になりません。 | |
離婚する時に請求していなくても、後から調停できるの? | |
離婚から2年以内なら、財産分与の調停の申立てはできます。申立ては、申立書を家庭裁判所に提出して行います。 | |
調停は確か、話し合いによる解決だよね?誰がどう話し合いに関わってくれるの。 | |
家事調停は、裁判官1名と家事調停委員2名による調停委員会が行います。財産分与の調停では、調停委員会は、婚姻中に夫婦で協力して得た財産には何があるか、財産の取得や維持に対する双方の貢献の度合い等について、双方から事情を聴きます。必要に応じて、不動産の登記簿謄本や預金通帳の写し等、関係する資料の提出も求めます。事情を把握し対立点を整理した上で、解決案を提示する等して、合意を目指し話合いが進められます。合意が成立すれば調停成立です。 | |
もし、財産分与の調停に息子が行かなかった場合や、行っても合意ができなかった場合は、どうなるの。息子は自分から出ていった元妻に財産を分ける気はないと怒っているんだけど。 | |
そのような場合、財産分与の調停は不成立となり、審判手続に移行します。審判では、裁判所が、当事者の紛争の経緯や具体的事情を考慮した上で、後見的な見地から、どう財産分与をすべきかの判断がされます。 そして、審判から2週間以内に即時抗告しなければ、審判は確定します。審判が確定すると、それに基づく強制執行も可能です。 ですので、調停に行かなければ財産分与をしなくて済むことにはなりません。 |
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放っておいたり、分与する気は無いと言っていれば済むものではないのだね...。 息子夫婦が結婚してから購入した自宅は、土地も建物も息子の単独名義なのだけど、元妻にも分与しなきゃいけないのか‥。 財産分与での妻の取り分はどれくらい? |
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2分の1となることが多いですが、夫の職業等で変わることもあります。 | |
息子は今後もその自宅に住む予定なんだ。この場合、具体的にどうやって財産分与をすることになるの。 | |
不動産の価値の2分の1を代償金として支払う形の分与方法になると思われます。 | |
息子名義の家土地は3千万くらいの査定だが、息子名義の住宅ローンもまだ2千万残っている。その扱いはどうなるの。 | |
ローン名義人が不動産を取得する場合、不動産価額からローン残額を控除した価額が不動産の価額になります。不動産の価値が3千万、ローンの残が2千万なので、不動産の価値を1千万として分与することになりますね。 | |
息子夫婦が家を建てるにあたっては、私もかなり援助したのだが、それでも必ず、1千万の半分、5百万を元妻に渡さなきゃいけないのかね。 | |
実家の援助があるような場合は、機械的に2分の1とするのではなく、具体的にその不動産の取得についての寄与度を認定する例もありますね。 | |
じゃあ息子は、私が援助したことが分かる資料を調停で出さなきゃいけないね。 | |
はい、そうするべきですね。 | |
ところで、不動産の価値よりも住宅ローンの残の方が多い場合もあるよね。もし、息子の自宅の価値が2千万、残ローンが3千万ならどうなるの。 | |
オーバーローンの場合ですね。息子さんの純資産がマイナスの場合、元妻は基本的に財産分与を求めることはできません。 | |
なるほど。じゃあ、オーバーローンの場合に、住宅ローンの名義人ではない元妻に、自宅を渡すことで、息子はローンの債務を一部免れるようなことはできるの? | |
債権者はあくまで息子さんにお金を貸しているのであって、債権者の承諾なく、勝手に債務者に交代させてローンの債務を免れることはできません。自宅を渡すかわりに元妻にローンの一部を支払わせるという合意はできますが、その効力はあくまで息子さんと元妻との間での話であって、債権者との間では、息子さんがローンを全部支払わなければなりません。 | |
確かに、通常、夫婦のうち、収入の多い方が住宅ローンの名義人になっているのだから、債権者の立場からすれば、勝手に債務者を変えられたらたまらないよね。息子の状況認識は甘いようだから、先生に代理人になってもらうのが良さそうだ。すぐに相談に行くように勧めるよ。 |