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当番弁護士・国選弁護人

中部経済新聞2015年1月掲載 
当番弁護士・国選弁護人

 2014年12月31日。来たる新年を迎えるべく、世間が賑やかな、そしてなんだか浮き足立っているときである。大掃除に追われる方や、家族でのんびりテレビを見て過ごす方、豪華にハワイで過ごされる方もいるかもしれない。

 しかし、私には、紅白歌合戦よりもハワイよりも大事なことがある。・・・そう、今日は当番弁護士・国選弁護人の担当日なのである。

 以前にもご紹介したことがあるが、弁護士の大事な仕事の一つに当番弁護士や国選弁護人というものがある。突然逮捕されてしまった人に、弁護士が1回ではあるが無料で面会に行き、法的手続や権利などについて説明をするのが当番弁護士で、一定の犯罪の疑いで逮捕・勾留されてしまった人に弁護人がつくのが国選弁護人という制度である。愛知県弁護士会では待機日制がとられており、割り当てられた担当日に当番弁護士や国選弁護人の要請があると、警察署などに出動するシステムになっている。

 そして、年末年始だからといって事件がなくなったり、警察が逮捕を待ってくれるわけもないため、当然、出動要請は365日いつでもありうるのだ。

 かくして、本日担当日を仰せつかった私は、今にも鳴るかもしれない携帯電話を横に、メイクもバッチリした状態で緊張感ある大晦日を過ごしているわけである。

 毎年、年末年始の担当日割当を積極的に引き受けてはいるものの、正直なところ、お正月くらいゆっくりしたいなあと思う時もある。もちろん、社会が動いている限りトラブルは起こりうる。突然身柄を拘束された人が、不安な気持ちで弁護士を待っているのはいつだって同じだし、まして年末年始を警察署で過ごさなくてはならないかもしれないとなると、早く会いに行って少しでも不安を取り除く必要もある。それはわかってはいるが、せめて年末年始くらい犯罪もトラブルもなしの平和な世の中で行こうよ、と言いたくなるのである。きっと警察の方も同意見だろう。

 ・・・そうこうしているうちに、電話が鳴った。出動要請である。電話を受けて、愚痴っぽい考えが頭から消え、すっと背筋の伸びた自分に気付いた。なんのことはない。なんだかんだ言って、やはりやり甲斐を感じているのである。さあ、2014年最後の仕事だ。

 こんな年末年始を過ごしている弁護士が全国にたくさんいること、知らない人も多いんだろうなあ。そんなことを思いながらも、私自身は、来年も再来年も、年末年始に白い息を吐きながら警察署に走る弁護士でありたいと思う。

 この原稿が皆様の目に入るのは、当然年が明けてからになる。新年早々、大晦日の小さな愚痴にお付き合いいただきありがとうございました。2015年もよろしくお願いいたします。 (R・Y)