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インサイダー取引 -公表される前の情報をもとに株取引

中部経済新聞2014年12月掲載 
インサイダー取引 -公表される前の情報をもとに株取引

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【質問】

 先日、息子が勤務先(上場会社)で担当する新商品の話を聞かせてくれたのですが、その話をもとに、息子の勤務先の株を買うと、インサイダー取引になってしまうのでしょうか。

【回答】

 もし、息子さんから聞いた新商品の話が公表されていない重要な情報であれば、あなたが息子さんの会社の株を買うことはインサイダー取引に該当し得ます。一般投資家が知りえない情報を入手できる特別な立場にある人が、情報が公表される前に、その情報を知って株取引をすることは、不公平ですし、取引市場の信用を害します。そこで金融商品取引法によってそうしたインサイダー取引が規制されているわけです。

 典型的なインサイダー取引は上場会社の関係者(会社関係者)が取引をする場合ですが、ご質問のように、会社関係者ではない人が、会社関係者から未公表の重要な事実を知らされた場合には、「情報受領者」としてインサイダー取引の規制対象となります。なお、会社関係者には、上場会社の役員や従業員(アルバイトや派遣社員も含む)だけでなく、親会社や子会社の役員や従業員も含みますし、会社関係者でなくなって1年以内の人も含みますので、注意して下さい。

 次に、息子さんから聞いた新商品の話が「未公表の重要事実」であれば、その事実を「知って」取引をすることでインサイダー取引として違法になります。その事実を利用することは要件ではありません(形式犯)。従って、あなたが息子さんの話を聞く前から息子さんの会社の株を購入しようと思っていたとしても、話を聞いてから株を購入することはインサイダー取引に該当し得るわけです。

 インサイダー取引については、金融商品取引法で罰則も含め細かく規制されていますので、詳細は弁護士にご相談下さい。なお、息子さんが勤務先の情報をあなたに話すことも、勤務先の機密を漏洩することになり問題です。