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増える自転車事故

中部経済新聞2014年09月掲載
増える自転車事故

社長 良かった・・・。
弁護士 どうしたんです?
社長 娘が自転車に乗っているとき、お婆さんとぶつかっちゃって、今、菓子折りを持ってお詫びに行ってきたんだ。幸い怪我もなく、許してもらえたんだよ。
弁護士 双方怪我がなかったのであれば何よりです。自転車事故は多いですからね。統計によれば、平成25年の自転車乗用中の交通事故件数は約12万件もあるそうですよ。
社長 娘のように自転車が加害者になってしまう事例も多いの?
弁護士 やはり自動車との事故が多いですが、自転車同士や歩行者との事故も少なくないです。
社長 今回のことで娘にも注意したけど、自転車を乱暴に運転している人を見かけるよね。自転車にも当然交通ルールはあるんでしょ?
弁護士 自転車は,道路交通法上,車両として扱われますので,道路交通法に従った運転をしなければなりません。国も,自転車の安全運転を普及するために,自転車安全利用五則を定めたりして,交通ルールを守るよう対策をとっていますが,まだまだですね。
社長 自転車安全利用五則って何?
弁護士 ①自転車は、車道が原則、歩道は例外、②車道は左側を走行、③歩道は歩行者優先で車道寄りを徐行、④安全ルールを守る、⑤子どもはヘルメットを着用する、というものです。自転車に乗るときに特に守るべき重要なルールを取り上げたものですね。
社長 なるほどね。
弁護士 よくある自転車事故の原因として、急な進路変更による安全不確認、一時不停止、信号無視などが挙げられていますが、交通ルールを守れば、多くは防げる事故なんですよね。
社長 酔っ払いが自転車を運転しているのも見かけるけど、あれも法律違反になるんだね。
弁護士 飲酒運転として道路交通法違反です。
社長 うちの息子にも、コンパ帰りに自転車を乗るなと注意しておかないと。

【道路交通法改正】

弁護士 道路交通法も自転車事故を減らそうと色々と改正されているんですよ。
社長 そうなの?
弁護士 例えば、昨年、自転車が左側通行だということが徹底されました。以前は、路側帯では双方向に通行できましたが、自転車同士の衝突や接触の危険があるため、自転車等の軽車両が通行できる路側帯も、道路の左側部分に設けられた路側帯に限られることになったんです。
社長 未だに右側を走っている自転車を見るけど,だめなんだね。
弁護士 他にも、死亡事故や重傷事故を引き起こす危険を防止するため、警察官が基準に適合したブレーキを備えていないと認められる自転車を停止させて検査を行い、応急のブレーキ整備や運転継続の禁止を命令できるようになりました。
社長 自転車に乗る人にはきちんと道路交通法に従った安全運転をしてもらわないとね。

【自転車事故の責任】

社長 ところで、今回、お婆さんに怪我がなく、許してくれたからよかったけど、もし怪我でもさせていたら娘はどうなっていたの?
弁護士 以前、自動車事故について3つの責任をお話ししましたが、同じように重い責任が生じます。自動車と違って免許制ではないため、行政上の責任はありませんが、刑事上の責任、相手に怪我を負わせた場合、民事上の損害賠償責任が発生します。

【刑事責任】

社長 刑事責任を負うこともあるの?
弁護士 はい。重過失致死傷罪により、5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

【民事責任】

社長 民事上の損害賠償責任も重いの?
弁護士 損害の算定方法は基本的に自動車事故と同じです。怪我が重い事例では、数千万円の請求が認められたものもあります。

【保険】

社長 とても支払えないよ。何か、自動車賠償責任保険みたいな保険はないの?
弁護士 自転車によっては購入時に保険が付帯している場合もあります。しかし、重い後遺障害が残った場合にしか適用がなかったり、十分でない場合もあります。やはり,日常生活において他人に怪我をさせてしまった場合などに備えた個人賠償責任保険をかけておくべきでしょうね。傷害保険や自動車保険の特約となっている場合もありますよ。他にも自転車事故に特化した保険もあるみたいです。

【使用者責任】

弁護士 ほかにも、従業員の方の業務中の事故にも注意する必要があります。
社長 どういうこと?
弁護士 従業員の方が業務中に自転車事故を起こしてしまった場合、会社にも使用者責任が生じる可能性があります。しかも、この場合、社員の皆さんが個人賠償責任保険に加入していても、業務中の事故は日常生活上の事故ではないため、適用外になってしまいます。
社長 それは困るね。
弁護士 施設賠償責任保険や、業務中の自転車事故に備えた保険もありますので、確認してみてください。
社長 わかった。備えあれば憂いなしとは言うけれど,一番大事なのは安全運転に心がけるということだね。