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学童保育の充実と女性の社会進出

中部経済新聞2014年07月掲載
学童保育の充実と女性の社会進出

 安倍政権の女性活用政策との関連で、「小一の壁」、「学童保育の待機児童は40万人」といった言葉を新聞記事等で見かけることが増えた。

 保育園までは、延長保育を利用すればおおむね午後7時頃までは保育が受けられるし、小学校の夏休みのような長期休みもない。

 それが、小学校入学後は、午後の早い時間に学校は終わり、夏休み等の長期休みは合計2か月以上にもなる。共働きや一人親の家庭にとって、保育園を卒園後、放課後や長期休みを子どもにどう過ごさせるのかは、深刻な問題である。

 仕事と育児の両立、男女共同参画と児童福祉の両立は、子どもの生活の場が確保されて初めて実現できる。6、7歳の1年生を長い夏休みの間中、鍵っ子にしなければ働けないなら、母親の就労と児童福祉は、対立する関係となろう。

 子ども達が、学童保育という生活の場で、指導員の見守りのもと、宿題をし、おやつを食べ、公園で異年齢の仲間と共に外遊びをする等、家庭的な雰囲気の中で過ごせれば、母親達は安心して働ける。

 しかし、女性の社会進出がさけばれて久しいが、児童福祉法の改正により、学童保育が児童福祉法上の事業として法制化されたのは平成10年である。

 また、学童保育が法制化された後も、長らく、学童保育で働く指導員や、開設場所に関する基準すら存在せず、平成26年4月になり、ようやく最低限の職員の資格・員数等の基準が定められたのである。

 このように、学童保育は、子どもによっては小学校よりも長い時間を過ごす場でありながら、行政の対応が後手になっていた。

 学童保育には、父母の自助共助により拡大してきた経緯があり、名古屋市等、父母による任意団体が実質的な運営主体の主流である自治体も少なくない。

筆者も名古屋市内の学童保育の役員をしている。父母自らが子の生活の場を運営し、地域の仲間と繋がって育児ができる良さがあるが、「事業経営」として、児童の入退所や保育料の管理、補助金の申請等お金の管理、指導員の雇用等の事務作業に忙殺される。本来やるべき「学童保育」が後回しになりかねず、本末転倒である。まだまだ解決しなければならない問題が多い。

 女性の活用は、「母親が就労中の子どもの生活環境」を保障することを抜きにしては語れない。経済成長一辺倒ではない、「母親の就労と子どもの福祉を対立させない」女性活用政策を切に望む。

 (A・S)