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中部経済新聞2014年03月掲載 いじめ問題で大切なこと

社長 これ、孫娘の新しい制服の写真。かわいいでしょ?
弁護士 もう中学生ですか。おめでとうございます。
社長 有り難う。
弁護士 お孫さんも希望でいっぱいですね。
社長 でも、今までの友達とは別々の学校になるみたいで、ちょっと心配しているみたい。
いじめの問題とか新聞でよく見るし、身内としても心配だな。

《いじめ防止対策推進法》

弁護士本当に胸が締め付けられるような事件が多くありますね。なんとかしなければと、昨年「いじめ防止対策推進法」ができたんですがご存知ですか?

社長 へえ。どんな内容の法律なの?
弁護士 この法律は「いじめ」を「児童生徒に対して...一定の人的関係にある他の児童生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒が心身の苦痛を感じているもの」と定義しています。
社長 いじめを受けている児童を基準にして定義しているんだね。

《いじめの禁止》

弁護士そうです。そして「児童等はいじめを行ってはならない」と定めました。

社長 当たり前のことなんだけどね。

《いじめ防止の方策》

弁護士その上で、行政機関や学校に対し、いじめの防止等のための対策に関する基本的な方針の策定を求めています。

社長 具体的にはどんな内容なの?
弁護士 学校の設置者や学校に対しては、道徳教育の充実、早期発見のための措置、相談体制の整備、インターネットを通じて行われるいじめに対する対策の推進を定めることを求めています。
社長 いじめを未然に防ぐ方策もあるんだね。
弁護士 そうですね。また行政機関に対しては、いじめの防止等の対策に従事する人材の確保等、調査研究の推進、啓発活動について定めることを求めています。
他にも、学校に対し、いじめの防止等に関する措置を実効的に行うために、複数の教職員、心理、福祉等の専門家などにより構成される組織を置くことを定めています。弁護士も、専門家としてこうした組織に関わり、継続的にいじめ防止対策の措置がとれるよう活動できればと思っています。
社長 学校関係者以外の専門家からの意見は重要だね。

《いじめ発覚後の措置》

弁護士それでも残念なことにいじめが認められた場合の措置として、個別のいじめに対して学校が講ずべき措置として、いじめの事実確認、いじめを受けた児童生徒又はその保護者に対する支援、いじめを行った児童生徒に対する指導又はその保護者に対する助言についても定めています。
社長 いじめの被害を拡げずに済むよう、機能してもらいたいね。
弁護士 そうですね。その他、もちろん、保護者の責務としていじめを行うことのないよう指導を行うよう努めることなども定めています。
社長 本当はこんな法律が必要ない世の中になればいいんだけどね。

《弁護士会の活動》

弁護士そうですね。
愛知県弁護士会でも、出前授業といって、実際に弁護士が中学校や高校へ赴き、いじめをなくすためにも、自分と異なる意見を排除しない考えを理解してもらうよう目指した授業を行うなど積極的な活動をしています。
学校にも、こうした弁護士の利用方法を是非知って頂きたいです。

《いじめへの対処》

社長 いじめが起きてしまった場合はどういう対処をしているの?
弁護士 残念ながら正解という対処方法はありません。個々の事案で対処の方法は異なりますし、その対処が正しかったのかどうか、難しい事案も多いです。
社長 誰かに責任追及すれば解決するという問題でもないからね。

《一番大切なこと》

弁護士 ただ、被害を受けた子どもさんの気持ちを置き去りにしないで、解決方法を探ることが重要なことは間違いないです。弁護士が表立って動くべき事案もあれば、その子の話をよく聞き、味方になる大人がいるとわかってもらえるだけで良い方向に向かう場合もありますから。
社長 なるほどね。
弁護士 いずれにしてもまずは表面上であってもいじめ自体を止める必要があります。教師や学校に対し、事実関係を伝え、対処を求めたり、場合によっては登校を差し控えざるを得ないこともあるでしょう。暴力をふるわれている場合には刑事事件にしなければならない場合もあります。初動をどうすべきか、子どもさんから丁寧に聴き取りをして、適切に判断しなければなりません。
社長 本当にこれという対処はないんだね。
弁護士 そうなんです。また表面上いじめが止まっただけでは本当の解決にはなりません。教師や学校とも協力して、粘り強く解決方法を探る必要があります。
社長 そうだね。
弁護士 もちろん、損害賠償請求をするのも一つの重要な手段です。ただ、裁判は被害者である子どもさんにも負担をかけますし、子どもさん自身が裁判を望んでいない場合もあります。その点を十分考慮して判断しなければなりません。
また、請求するにしても加害者である子どもさんには資力がない場合がほとんどでしょう。その場合、その親に請求できるのか、教師や学校あるいは行政に対し請求できるのか、色々と事情を検討する必要があります。誰に請求するかで必要となる証拠も少しずつ違ってきます。
いずれにしても、早い段階で弁護士に相談して頂きたいです。
社長 いじめをなくすのは簡単じゃないけど、社会全体で、いじめをなくす活動をしていかなければいけないね。