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中部経済新聞2013年08月掲載
従業員が傷害の疑いで逮捕、弁護人の役割は──
中部経済新聞2013年08月掲載
従業員が傷害の疑いで逮捕、弁護人の役割は──
【質問】
弊社の従業員Aが傷害の疑いで逮捕されてしまいました。弁護人はどんな活動をしてくれるのですか?
【回答】
今回は刑事事件における逮捕・勾留段階での弁護人の役割についてお話しします。
- 逮捕・勾留により身体拘束を受けることは、Aさんに大きな負担を強います。
何よりも大事なことは、Aさんと接見(面会)して信頼関係を築き、心理的な負担の軽減を図るとともに、Aさんから色々な情報を聞き取ることです。
この際、Aさんが捜査機関に対し、自分の意思に反した供述をしないよう、捜査機関による取調状況についても注意して聞き取ります。虚偽自白により冤罪事件が生じていることは新聞でも報道されているとおりです。 - Aさんから聞き取った情報から、そもそも勾留する必要がないような事情が判明すれば、検察官や裁判所に勾留しないよう強く求め、仮に勾留や勾留延長が決定されてしまった場合には、裁判所に不服申し立てをします。
- また、早期に身体拘束から解放されるよう、あるいは裁判になった場合に備え、Aさんに有利な証拠を集めます。
- [1] Aさんが傷害をしていないと争っている場合には、目撃証言やアリバイの存在など、そのことを裏付けるような証拠を集める活動をします。そしてそれらの証拠をもとに、検察官に起訴しないよう申し入れます。
- [2] 一方、もしAさんが本当に傷害をしたのであれば、早期に被害者と示談を成立させるような活動をします。示談ができれば起訴を免れる(起訴猶予)かもしれません。
また、Aさんが傷害行為に至った事情において、被害者がAさんを挑発したといった酌むべき事情があれば、傷害自体は許されないこととしても、それを明らかにする証拠を集めたりします。
- 最後に、Aさんの心身のケアも重要です。仕事にも行けず家族や友人にも自由に会えない状況はとても不安なものです。弁護人は、今後の手続の流れや処分の見通しについて適切なアドバイスをし、家族からの伝言を届けるなどして、Aさんを励ましたりします。
また、体調が悪いにもかかわらず取調べを強制されるようなことがあれば、ただちに捜査機関に抗議し、医師の診察を受けさせてもらうよう要請もします。
このように、弁護人は多方面からAさんを支える活動をします。