愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > ライブラリー > 中部経済新聞2013年3月掲載 
【聞之助ダイアリー】 会社と弁護士

中部経済新聞2013年3月掲載 
【聞之助ダイアリー】 会社と弁護士

 かつて弁護士会で「会社は誰のものか」というテーマで行事を開催したことがある。東京地検特捜部が株式で巨万の富を得ていた時代の寵児たちを逮捕するよりも前のことである。

 会社法上は会社が株主のものであることは明白であり、議論の余地はない。けれども社会の中でも本当に同じことがいえるのだろうか、法律家の集団である弁護士会がこのようなテーマをあえて取り上げることには非常に意味があると考えた。そして、この意図は見事に成功した。上記の行事でお招きした講師は次のようなことを述べてくれた。「私は経済ジャーナリストとして、何百社という企業を取材してきました。リーダーのタイプや会社の体制等には様々な形があります。けれども、成功している会社に唯一共通していることは、その会社が世のため人のためになっているかどうかということです」。

 会社は、株主はもちろん、従業員、取引先、顧客、地域社会等すべてのステークホルダーのために存在している。そうすると、会社は誰のものか、という観点はさほど重要ではなく、会社は誰の「ための」ものか、ということにこそ意味があるのではないかと思う。

 とある会社の不祥事に際して、その関係者から「うちだけが非難されていますが、他も同じようなことをやってますよ」という説明を受けたことがある。私は、彼に向かって、次のように指摘した。「それは他の会社もあなたのところと同じように悪い会社だと言っているだけで、何の説明にもなっていませんよ」と。

 私は、依頼もしくは相談を受けた会社に対して、その会社が「世のため人のため」になるような助言をし続けていきたいと思う。それが会社関連の仕事に携わる弁護士の使命であると信じたい。実際には、常に現実と理想との間で悩んでいるが・・・。

 最後に先輩弁護士から教えてもらったことを二つほど。

 その1「コンプライアンスとは朝から晩まで自分が行っていることを胸を張って家族や友人に話せるのかどうかということである」

 その2「正義はコロコロ負ける。けれども、やはり最後には正義が勝つ」

 世の中、案外捨てたものではないかもしれない。

(N・Y)