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中部経済新聞2013年01月掲載 隣人ともめる境界線問題

社長 正月に実家帰ったらさ、お隣さんとの関係で困ったことになっていたんだ。
弁護士 どうされましたか。
社長 実家が土地を売りたいらしいんだけど、購入を希望する人から境界をはっきりさせてくれって言われたそうなんだ。しかし、お隣さんとの間で、どこまでがそれぞれの家の土地か意見が違っていて、もめているんだよね。 

【境界の参考資料】

弁護士 何か境界を確認できるものがあればいいですね。お隣との間に、境界標はありませんか。
社長 境界標とはどんなものかな。
弁護士 境界を明確にするために設置された目印です。一般的には、石やコンクリート、プラスチックの杭などが用いられています。
社長 うーん、境界標は見たことないなぁ。
弁護士 そうですか。まあ、境界標も必ずしも正確ではないのですが・・・。土地家屋調査士に現地を確認してもらってもよいかもしれません。
社長 なるほど。しかし費用が心配だなぁ。他に境界を決めるために参考になるものはあるかな。
弁護士 不動産登記法14条で定められた地図や公図、地積測量図、地形、登記簿に書かれた面積、占有状況、古文書や地元の方の話などですね。
社長 いろいろあるんだね。

【話し合いができたら】

社長 お隣さんと話し合いができそうなら、どうしたらいいかな。
弁護士 お隣の方と境界の合意ができたら、境界確認書を作成し、境界標を入れるなどして、境界をはっきりさせておくことが必要です。 

【話し合いがつかないとき】

社長 事者間で話し合いがつかなければ、どうしたらいいかな。
弁護士 民事調停を申し立てたり、土地家屋調査士会が運営する境界問題相談センターや、弁護士会が運営するあっせん・仲裁センターを利用することが考えられますね。
社長 なるほど、第三者に間を取りもってもらうんだね。それでも話し合いがつかなければ、裁判を起こすことになるのかな。
弁護士 そうですね。しかし、所有権確認訴訟を起こすと、訴えた側(原告)が、争われている土地が自分の所有に属することを主張立証しなければなりません。立証できなければ敗訴の危険があります。
社長 なるほどね。

【公法上の境界と私法上の境界】

弁護士 ところで社長、土地の境界という言葉には、公法上の境界と私法上の境界という二つの意味があるのを御存知ですか。
社長 はじめて聞いたよ。
弁護士 公法上の境界とは、登記されている特定の地番と隣の土地との境界線です。筆界(ひっかい)とも言います。筆界は、国が決めているものであり、土地の所有者間で勝手に決められません。一方、私法上の境界というのは、自分の所有地はここまでだということです。登記所に登記された土地の地番の範囲に関わらないので、当事者間で合意ができます。
社長 今まで二つの違いを意識したことがなかったなぁ。
弁護士 先ほどまでご説明していたのは、私法上の境界についての解決方法です。これが、筆界と一致することは多く、一致していれば問題ありませんが、一致していないこともあります。
社長 それは避けたいね。
弁護士 ええ。そのためにも、また、当事者が筆界を私法上の境界として納得することも多いので、筆界を確定することで私法上の境界に関する紛争の解決を目指すこともあります。
社長 私法上と公法上と一致した解決になるんだね。

【公法上の境界の確定方法】

社長 筆界を確定するにはどうしたらいいのかな。
弁護士 まず、裁判所に境界確定訴訟を提起することが考えられます。この裁判は、私法上の境界を確定するための所有権確認訴訟と異なり、原告に主張立証責任はありません。ただ、判断が難しいため、長時間を要する場合も少なくありません。
社長 裁判より早く解決する方法はないかな。
弁護士 はい。迅速な解決を目的として、平成17年に「筆界特定制度」が新設されました。
社長 どんな制度なのかな。
弁護士 はい。登記所の登記官が、土地の所有者等の申請により、筆界調査委員の意見を踏まえて、土地の筆界を特定します。隣接する土地の所有者が共同で申請することも可能です。ただ、境界確定訴訟が提起され、判決で別の判断がなされた場合には、判決が優先します。

【難しい境界問題】

社長 なるほど。お隣さんだからまずは話し合いで解決したいけど、いろいろな方法が考えられるんだね。
弁護士 そうなんです。どの方法が望ましいか、証拠関係や争われている内容を考慮して方針を決める必要があります。
社長 うーん、判断が難しそうだなぁ。実家はちょっと離れているけど、相談に乗ってやってくれるかい。
弁護士 もちろんです。境界には今申し上げた以外にも、時効など色々と複雑な問題がありますので、詳しい事情をお聞かせください。