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【ちょっとお得】 裁判員候補者に選ばれたら3~「自白」の判断は慎重に

中部経済新聞2012年9月掲載
【ちょっとお得】 裁判員候補者に選ばれたら3~「自白」の判断は慎重に

【質問】

 裁判員候補者に選ばれました。私に裁判員が務まりますか?

【回答】

 7月号に引き続き、日本弁護士連合会が、裁判員裁判において裁判員となられた方に向け、ご説明している「心にとめておきたい4つのこと」をお話しします。今回は、3つ目の、「自白の判断は慎重に」についてです。

 自白は、犯罪事実を認める供述です。我々の感覚としては、つい、罪を犯していない人が自白などするはずがないと思いがちです。しかし、罪を犯していなくとも自白してしまうことがあるということは、「足利事件」などでご存知のとおりだと思います(※)。

 そして、被告人が自白したという事実は、裁判員に「有罪」との強い印象を与えます。だからこそ、自白を本当に信用してよいかどうか、慎重に検討しなければなりません。

 拷問や脅迫が行われた場合には、7月号でお話ししたとおり、そもそも証拠としての資格(証拠能力)が認められません。しかし、そのようなことが行われたかどうかは、取調べの全過程を録画するなど、後から検証できるようにしなければわかりませんが、残念ながら現時点では実現していません。また、不適切な取調べがなかったとしても、ウソの自白をしてしまうことはあります。加えて、捜査機関は、客観的な証拠と矛盾しないよう自白させる傾向にありますので、ウソの自白であっても、その内容は他の証拠と矛盾せず、詳細で、迫力ある内容になっている場合がほとんどです。

 あなたが裁判員となった事件で、仮に被告人が自白していたとしても、他の証拠と矛盾しない、あるいは詳細で迫力ある内容だからといって、安易に信用せずに、なぜ、被告人は自白をしたのか、その自白は本当に信用できるのか、丹念に検討してください。

 ※捜査段階で一旦自白したことなどを理由に,殺人罪で実刑が確定したが,後に、遺留物のDNA型が一致しないことが判明し、確実な無実であったことが発覚した冤罪事件。