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認められない二重国籍~再度取得は一部条件緩和~

中部経済新聞2012年7月掲載
認められない二重国籍~再度取得は一部条件緩和~

社長 もうすぐロンドンオリンピックが開幕するね。今から楽しみだよ。
しかし、猫ひろしがマラソンに出場するところも見たかったなあ。
弁護士 話題になりましたが、結局、出場は認められませんでしたね。
社長 せっかくカンボジア国籍を取得したのにね。そういえば、彼の国籍は、今どうなっているんだろう。
日本国籍はなくなってしまったのかな。
そうだ、今日は国籍のことについて教えてよ。
弁護士 分かりました。それでは、まずは日本国籍の取得についてご説明しましょう。
日本国籍の取得や喪失に関するルールは、国籍法という法律で定められています。
国籍法が定める日本国籍の取得原因は、出生、届出、帰化の3つですね。
社長 出生というのは分かる。
日本で生まれた子は日本国籍を取得するっていうわけだろ。
弁護士 ところが、必ずしもそうではありません。
国籍法は、「出生の時に父又は母が日本国民であるとき」に、子は日本国籍を取得すると定めています。
日本で生まれた子が日本国籍を取得するとは限らないのです。
社長がおっしゃったような考え方を生地主義といって、そのように国籍の取得を認める国もありますが、日本の国籍法は別の考え方を採用しています。
これを血統主義と言います。
社長 日本人の子は日本国籍を取得するってことなのか。
弁護士 これに関連して注意を要するのが、婚姻していない日本人父と外国人母との間に生まれる子です。
婚姻していない父母の間に生まれる子について、法律上の父子関係は父が認知をしないと生じません。
そのため、この場合には、子が生まれる前に認知(胎児認知)をしておかないと、「出生の時に」法律上は日本国民である父がいないことになり、出生によって日本国民を取得することができなくなってしまうのです。
社長 それは気をつけないといけないね。
弁護士 胎児認知をされていなかったため日本国籍を取得することができなかった日本人父と外国人母との子は、出生後に父から認知された場合には、法務大臣に届け出ることによって日本国籍を取得できる場合があります。
ただし、一定の条件を満たしている必要がありますので、注意して下さい。
社長 それが届出による日本国籍の取得か。
弁護士 届出による日本国籍の取得が認められるのは、この場合だけではありませんがね。
そして、帰化というのは、日本国籍の取得を希望する外国人が、法務大臣の許可を得て、日本国籍を取得する制度です。
社長 そういえば、元中日ドラゴンズの大豊選手も帰化していたね。
弁護士 ちなみに、許可を得るためには、引き続き5年以上日本に住んでいること、素行が善良であること、自己又は親族の資産、技能によって、生計に困ることなく日本で暮らしていけることなどの条件を満たす必要があります。
なお、日本で生まれた者、日本人の配偶者や子、かつて日本人であった者など、日本と特別な関係を有する外国人については、帰化の条件が一部緩和されることがあります。
社長 日本国籍の取得については分かったよ。
それじゃあ、日本国籍を喪失するのはどんなときなんだい。
弁護士 国籍法は、日本人が自分の意思で外国国籍を取得したときは、日本国籍を失うと定めています。
例えば、外国に帰化した場合には、自動的に日本国籍を失うことになります。
二重国籍は認められないということですね。
社長 ということは、猫ひろしは・・・。
弁護士 分の意思でカンボジア国籍を取得したわけですから、日本国籍を喪失したということになりますね。
社長 そうなると、また日本国籍を取得する必要があるんだね。
弁護士 猫ひろしさんが再び日本国籍を取得するとしたら、先ほどお話ししたように、許可の条件は一部緩和されるでしょうが、法務大臣の許可を得て、帰化する必要があるでしょうね。
社長 猫ひろしは気軽にカンボジア国籍を取得していたように見えたけど、なかなか難しいものなんだね。
弁護士 国籍の取得にしても喪失にしても、国籍に関する問題は専門性が高く、難しいものが多いのです。
愛知県弁護士会法律相談センター(電話052-252-0044)では、専門相談として外国人相談を行っていますので、何かあれば、そちらにご相談いただくとよろしいでしょうね。
社長 なるほど。それは心強い。
知り合いの外国人が困っていたら紹介することにしよう。