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【ちょっとお得】 裁判員候補者に選ばれたら

中部経済新聞2012年6月掲載
【ちょっとお得】 裁判員候補者に選ばれたら

【質問】

 裁判員候補者に選ばれてしまいました。私に裁判員が務まるのでしょうか?

【回答】

 日本弁護士連合会では、裁判員裁判において裁判員となられた方に向け、「心にとめておきたい4つのこと」をご説明しています。この4つのことを、十分に理解して臨んで頂ければ、大丈夫です。

 今回は、その一つ、「常識にしたがって、『間違いない』と確信できないときは無罪にする勇気を持って頂きたい」ということを説明します。

 言うまでもなく、えん罪で国民を処罰するのは国家による人権侵害の最たるものです。刑事裁判は、このえん罪を生み出さないために発展し、「無罪の推定」という大原則を作り上げました。

 過去のえん罪事件からもわかるように、疑いを向けられた市民が自ら「無実」を証明することは困難です。

 一つ一つの事実について、証拠によって、あったともなかったとも確信できないときは、「無罪を推定」し、被告人に有利な方向で決定しなければなりません。そして、刑事裁判で有罪方向の事実を認定するためには、検察官が「合理的な疑問を残さない程度」まで証拠を提出し、証明しなければなりません。

 「被告人は疑わしい」という程度の証拠しかない場合は、有罪ではないのです。

 この「合理的な疑問」について、国民の皆さんの常識感覚を取り入れようとしたのが、まさに裁判員制度です。

 裁判員になったあなたに求められていることは、揺るぎない真実を明らかにすることではなく、じつは、検察官が「合理的な疑問を残さない程度」の証拠を提出したかどうかを判断することなのです。 

 証拠に基づき、常識に照らして考えたとき、検察官の言い分に何の疑問もなく確信できるか、それが裁判の基準です。その確信ができた時のみ、有罪と判断できるのです。