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消費者惑わす豪華懸賞を制限

中部経済新聞2012年6月掲載
消費者惑わす豪華懸賞を制限

社長 最近、携帯電話などでのゲームが問題となっているとニュースで聞いたのだけど、何が問題なの?
弁護士 通信を利用したソーシャルゲームの「コンプリートガチャ」(コンプガチャ)のことですね。 スマートフォンなどの携帯の端末で、お金を払ってカードを引いて、数種類のカードを集めると、珍しいカードやゲームで使えるアイテムがもらえるというゲームです。
社長 そうそう。そんなゲームだったな。
弁護士 コンプガチャは、消費者庁が、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)で禁止されている「カード合わせによる景品提供」に当たるという判断を示したため、問題となっているのです。
社長 そもそも、景品表示法ってどんな法律なの?
弁護士 景品表示法は、消費者の選択を誤らせるような不当な表示や、過大な景品類の提供を制限したり禁止したりすることで、消費者の利益を保護するための法律です。
社長 へぇ。なぜ、そんな法律があるの?
弁護士 例えば、高品質で低価格の商品であるかのように不当に宣伝したり、高額な景品を商品につけたりすることで、消費者の選択を誤らせないようにするためです。
社長 確かに、豪華な景品がついていると、つい買いたくなるだろうなぁ。でも、豪華な景品がもらえるなら、むしろ、客にとってはよさそうなのだけど...。
弁護士 そもそも、景品表示法のいう「景品類」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品や役務の取引に付随して相手方に提供する、物品、金銭、その他の経済上の利益とされています。
例えば、資本がたくさんある会社が、商品の何百倍もの価値のある景品類を添えて、消費者に提供するとします。
社長 そうなると、豪華な景品を目当てにその会社の商品を購入するようになるね。
弁護士 そうです。その場合、景品を添えることができないようなわずかな資本の会社の商品が売れなくなってしまいます。そうなってしまうと、結果的に公正な取引ができなくなり、消費者の利益が害されることになります。
社長 なるほど。
弁護士 また、景品の競争がエスカレートするようになると、商品の開発を軽視するようになり、商品の品質低下を招くといった問題もあります。
社長 確かに、本来は商品自体の競争であるべきだね。
弁護士 そういった理由から、景品の限度額が表1のように規定されているのです。 表1
社長 なるほどね。そういえば、本を買ったときに、くじを引いて、当選すると図書券などの賞品がもらえるというキャンペーンがあったのだけど、そのような場合にも限度額が決まっているの?
弁護士

はい。くじなどの偶然性を利用して景品を提供するような場合は、景品表示法が規定する「懸賞」にあたります。このような懸賞の場合にも、限度額が規定されています。 例えば、商品を購入したり、役務の提供を利用したりした人に、懸賞によって景品類を提供する場合を一般懸賞というのですが、この場合は、表2のように取引価額に応じて、景品類の限度額が決まっています。

表2

社長 あれっ、商店街などの懸賞は、もっと豪華な賞品もあったような気がするけど...
弁護士 そうですね。商店街や同じ業界の事業者が共同で実施する懸賞の場合については、共同懸賞というのですが、この場合は、最高額が取引額に関わらず30万円というように限度額が引き上げられています。
社長 なるほど。だから、豪華な賞品があったのだな。
景品表示法で、景品類について規制があることはよく分かったよ。でも、景品表示法とコンプガチャは、どう関係してくるのかな?
弁護士 実は、景品類の価額に関わらず、全面的に禁止されている懸賞があるのです。
社長 どんな場合?
弁護士 それが、コンプガチャのような懸賞なのです。
社長 というと?
弁護士 例えば、お菓子の箱に、野球選手の写真のカードを1枚ずつ入れて販売し、特定の選手をそろえてお店にもっていくと、豪華な景品と交換してもらえるというような懸賞です。このように、2種類以上のカードの異なる種類の組み合わせを提示させる方法を用いた懸賞(カード合わせによる景品提供)は、あと一つでそろうということになると、景品のために必要以上に商品を購入してしまうおそれがあります。このような射倖心を煽るような方法は、消費者が自主的に商品を選択できないため、禁止されています。
社長 なるほど。あと少しで景品がもらえるとなると、止まらなくなりそうだ。
弁護士 コンプガチャで子供が大金を使ってしまったのもそのような理由からです。
社長 今回、景品や懸賞にも規制があるということが分かったので、今後は、景品を付けたりする際には相談するよ。