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【聞之助ダイアリー】  詐欺被害の破産者救済

中部経済新聞2012年2月掲載
【聞之助ダイアリー】  詐欺被害の破産者救済

「不要な高額商品の購入が原因で破産」というと、もっぱら、自分の欲求の赴くままに借金で贅沢三昧をしたあげくに、首が回らなくなった人を想像されるかもしれない。

 しかし、実際には、浪費的支出が借金の原因ではあっても、破産者も被害者であるケースがある。 
 デート商法や結婚詐欺的な状況があるケース、あやしげな投資セミナーに引っかかった等々。
 騙されていることに気づかずに、あるいは薄々気づきながらも騙されていることを認められずに、知人や家族に被害を拡散してしまう例もある。
 借金がかさんだ頃におまとめローン詐欺や低利の融資を謳う保証金詐欺に遭い、ますます借金が膨らむこともある。
 騙されたと気づいた時には、借金は返しても返しても返しきれない額になっている。

 騙した業者に損害賠償請求をしようとしても、悪質な業者には、企業としての実態も賠償の資力もないことが多い。
 多額の債務が残った被害者にとって、現実的な解決は破産しかないことがままある。

 そして、一度でも詐欺的商法の被害者になってしまった人は、どうしても、別の悪質業者からもターゲットにされやすい。
 そのため、「被害者でもある破産者」については、再び被害に遭わないためにも、被害に遭ってしまった原因について、破産者自身が気づく必要がある。

 その気づきを促すために、弁護士は何を言うべきだろうか。
 破産者に対し、収入と借金額の数字だけを並べて、「常識で考えれば、返せるはずがない借金でしょう」、「そんな甘い話がある訳無いでしょう」と説教するのはたやすい。
 しかし、そんなありきたりな非難であれば、破産者は、弁護士のもとにたどり着く以前に周囲からさんざん受けているはずである。
 むやみに上から目線で、周囲と同じ説教をしたのでは、自分は悪くない、騙された被害者だと内心で反発されるだけで、破産者の立ち直りには繋がらないだろう。
 「騙すやつが一番悪いのはもちろんだよ。あなたが必死で返してきたことも分かる。
 だけど、どうしてその時は信じてしまったのか、どうしてもっと早く気づいて引き返せなかったのかは、一緒に考えよう。
 そうでないと、また騙されてしまいかねない。
 あなたやあなたの大切な人がもう苦しまなくて済むよう、考えよう」。

 そんな姿勢こそが、破産者の立ち直りに繋がるのではないかと、私は思う。
(A・S)