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【ちょっとお得】 破産の手続き・注意点(個人の破産)

中部経済新聞2012年1月掲載
【ちょっとお得】 破産の手続き・注意点(個人の破産)

【質問】

個人の破産について、その手続や、破産を選択した際に注意すべき点を教えてください。

【回答】

先月は法人の破産について説明しました。今月は、個人の破産について簡単にご説明します。

 会社の債務について連帯保証しており、債権者から巨額の支払いを求められた。消費者金融から借入をしていたが会社が破産し解雇されたために返済できなくなった。このような場合にその個人の自己破産を検討することになります。

 個人の破産についても、手続の内容は基本的に会社の破産の場合と同様です。裁判所に破産を申し立てると破産管財人が選任され、管財人が個人の財産を換価して債権者に配当します。ただし、個人の場合には、会社の破産と比較して次のような違いがあります。

 まず、個人の破産については、破産者の財産の一部を破産者の手元に残すことができます。会社の場合ですと、原則として換価できる財産は全て換価して配当に充てられますが、個人の破産の場合に同様の手続をとると、破産後の生計を立てることができなくなってしまいます。そこで、冷蔵庫、衣類といった生活必需品のほかに、原則として99万円以下の現金その他一部の財産(これを「自由財産」と言います。)については、配当に充てず、破産者の手元に残されます。

 次に、個人の破産の場合でも、原則として裁判所に手続費用(名古屋地方裁判所に申し立てるのであれば負債総額1億円以下の場合には40万円程度)を予納しなければなりません。しかし、例外的に、換価できる財産がほとんど無い場合には、破産管財人を選任せず、破産手続を開始すると同時に終了(廃止)する手続(「同時廃止」と言います。)が採られることもあります。この場合には予納金は数万円です。

 最後に最も重要な違いとして免責手続の存在があります。会社の破産の場合には、破産手続が終了すれば会社は消滅することになりますが、個人の場合には消滅するというわけにはいきません。そこで、破産手続の終了後には、税金・養育費など一部の例外を除いて今後債務の支払いを免れるという免責手続がとられることになります。ただし、債務を負った原因がギャンブルであったり、破産手続をとる直前に一部の債権者だけに支払いをしていたりすると、免責が受けられなくなる可能性がありますのでご注意ください。