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時代に対応した紛争解決機関であり続けるために~災害ADR、そしてリモートADRへ~

紛争解決センターだより
時代に対応した紛争解決機関であり続けるために~災害ADR、そしてリモートADRへ~

会報「SOPHIA」令和3年5月号より

令和2年度担当副会長 竹内 裕美

1 はじめに
 平成9年4月に設置された当センターの取扱実績は5000件を超え、年間の申立件数は概ね200件前後で推移しています。令和元年度の申立件数は204件と全国最多でした(日弁連・仲裁ADR統計年報(全国版)2019)。受理事件の3~4割が和解で解決しています。
2 当センターの特長
(1)簡易・迅速・柔軟な手続
 あっせん人が必要性を認めた場合には、弁護士会館以外であっせん期日を開催することができ、遠方に居住する一方当事者に代理人弁護士が選任されている場合には、当該代理人が電話により参加できるなど、柔軟な期日設定が可能です。また、HPから書式集や申立書記載例(離婚紛争、交通事故、建物賃貸借紛争、建築紛争、医療紛争)をダウンロードすることができます。
(2)専門性の高い紛争への対応
 令和3年4月現在、専門家あっせん人・仲裁人(カウンセラー、不動産鑑定士、建築士、土地家屋調査士、公認心理師、国際商事関係、社会福祉士、IT関係等)は44名です。医療の専門知識が必要となる案件については、専門委員(医師49名、歯科医師7名)に加わっていただきます。当事者双方が合意すれば、あっせん・仲裁人を指名することもできます。
(3)認証ADR機関
 平成20年6月にADR法に基づく法務大臣の認証を取得しました。ADR法上、①時効の中断効、②訴訟手続の中止、③調停前置主義の特例等が適用されます。
(4)即決和解・即日調停
 名古屋簡易裁判所及び名古屋家庭裁判所との間で、即決和解及び即日調停の利用に関する取り決めをしていますので、あっせん手続により成立した和解契約に執行力を付与することができます。
(5)国際家事ADR
 ハーグ条約に基づく援助決定を受けた当事者を対象とするあっせん手続です。日本語以外の言語を使用することができ、当事者が外国在住により出席が困難な場合等は、スカイプによる参加が可能です。外務省が手数料を負担しますので、原則として当事者の費用負担はありません。
3 令和2年度の状況
(1)受理件数
 本会、西三河支部、一宮支部の合計で151件でした。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、4月13日から6月14日まで、センター業務を休止したことが件数の減少に影響しました。
(2)災害ADR事業の立上げ
 大規模災害に備えて、災害ADRを開始しました。被災者の負担を軽減するため、申立手数料は不要、成立手数料は通常事件の2分の1です。感染症のまん延も「災害」に該当します。申立書を提出するまで、サポート弁護士により支援を受けることができます。
(3)国際家事ADR
 ハーグ条約事案の利用が合計2件ありました。令和3年度も外務省からハーグ条約事業を受託し、英国・リユナイト及びシンガポール・SMCとの二国間共同調停事業も引き続き受託する予定です。
4 今後の展望
 新型コロナウイルス感染拡大が全国に及んだことを契機として、各地の弁護士会でオンラインによるリモートADRを実施する動きが加速しました。当会の紛争解決センター運営委員会も、規則改正、マニュアルや書式の作成に既に取り組んでおり、近い将来、リモートADRが実現するものと思われます。