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憲法問題を知る講演会と対談 -安保法制から考える憲法9条-
会報「SOPHIA」 平成30年3月号より
憲法問題委員会 委員
酒 井 寛
1 本行事の開催
2月25日、鯱城ホールにおいて「憲法問題を知る講演会と対談」が開催されました。第1部は、ジャーナリストの布施祐仁氏と愛敬浩二名古屋大学大学院教授にご講演いただきました。第2部では川口創会員の司会による布施氏と愛敬教授の対談が行われました。
2 布施祐仁氏の講演
布施氏によると、政府は、自衛隊を憲法に明記したとしても、権限や任務の内容に変更はないと言うが、既に自衛隊は、創隊以来の大改革の最中にあるとのことです。具体的には、3月の陸上総隊の創設に際し、「日米共同部」が設けられるなど、自衛隊が米軍と一体化するような組織の改定がなされ、また、現場レベルでも米空母と自衛隊の護衛艦が共同訓練を行うなど、自衛隊と米軍の一体化が進んでいます。しかし、布施氏は、南スーダンのPKO部隊の日報が隠蔽されたことが明るみになり、自衛隊が撤退せざるを得なくなったことからも分かるとおり、憲法9条がある限り、自衛隊が、制約なく、米国の「完全なパートナー」として海外で活動することはできない。改憲を企てる政府の狙いは、この制約を取り払う点にあると述べられました。
3 愛敬浩二教授の講演
愛敬教授は、まず、「現状」を変更しない憲法9条改憲は可能かという点について、安保法制成立以前の政府の憲法9条に関する解釈は、少なくとも、集団的自衛権の行使を違憲とするという点で一貫しており、かつ、合憲である個別的自衛権の行使と違憲である集団的自衛権行使という明確な区別が可能であったが、安保法制成立後の政府の憲法9条に関する解釈は、「わが国の存立が脅かされ」等の要件が不明確であるため、同法制成立後は、自衛隊等の憲法9条に係る「現状」を変更しない等ということは不可能であり、ましてや、憲法9条を改憲しつつ「現状」を1mmも変えない等ということはあり得ないと述べられました。また、「専守防衛」を堅持すれば、安保法制の「現状」を追認しても大丈夫かという問題意識については、護衛艦である「いずも」を空母に改修することが検討される等の状況の中、「専守防衛」の中身を問う必要があると述べられました。
4 対談
北朝鮮問題については、両氏は共に、米国と北朝鮮が戦争になれば、日本が北朝鮮のミサイルの標的になるおそれがある。したがって、北朝鮮問題への対応策としては、外交努力により戦争を避けること以外にあり得ないと述べられました。沖縄問題についても、両氏はそろって、米軍の海兵隊が沖縄から撤退する必要性について述べられました。最後に憲法9条改憲について、布施氏は、自衛隊の現状を1㎜も変えないのであれば、多額の予算をつぎ込んでまで改憲をする必要があるのか、米軍と一体化する自衛隊の現実から出発し、自衛隊がどうあるべきかという議論が必要であると述べられました。愛敬教授は、憲法も法である以上、改正するには立法事実が必要であるが、自衛隊の現状が「変わらない」のであれば、立法事実が存在しないことになる。したがって、政府に憲法9条改憲の立法事実を説明させる必要があると述べられました。
5 おわりに
自衛隊が置かれている現状を踏まえながらの議論を聴かせていただき、政府が進める憲法9条改憲の問題点をよりリアルに捉えることができました。