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ストーカー規制法が改正されました

犯罪被害者支援連載シリーズ(70)
ストーカー規制法が改正されました

会報「SOPHIA」 平成29年1月号より

犯罪被害者支援委員会 委員 大 塚 徳 人

 ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法)が、昨年12月に改正され、1月3日、一部を除き施行されました。

(1) 改正の概要

 ストーカー規制法は、平成12年の制定後、平成25年に連続して電子メールを送信する行為を規制対象に追加すること等を内容とする改正が行われました。今回の改正は、昨年5月に東京都小金井市で発生した、芸能活動を行っていた女子大生がファンの男に刃物で襲われた事件で、事件前に犯人がツイッターなどのSNS上で被害者に繰り返しメッセージを送っていたこと等を受け、技術の進歩や社会情勢の変化に対応するため、規制対象行為の拡大、罰則の強化及び禁止命令の手続の迅速化等を盛り込んだものです。 
 改正の主なポイントは以下のとおりです。

(2) 規制対象行為「つきまとい等」の拡大等

 ストーカー規制法は、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で当該特定の者等に対し同法2条1項各号に掲げる行為をすることを「つきまとい等」として規制し、つきまとい等を反復して行うことを「ストーカー行為」として規制しています。
 改正法では、住居等の付近をみだりにうろつく行為(2条1項1号)、拒まれたにもかかわらず連続してSNSを用いたメッセージ送信等を行う行為、ブログ、SNS等の個人のページにコメント等を送る行為(同条1項5号、2項)が「つきまとい等」として新たに規制されることとなりました。
 また、「つきまとい等」の一類型である性的羞恥心を害する行為(同条1項8号)について、電磁的記録やその記録媒体を送りつける行為等が確認的に明記されました。

(3) 禁止命令等の制度の見直し(公布日から起算して6月を経過した日から施行)

 改正前は、警察本部長等は、「つきまとい等」の被害者の申出により、違反行為者に警告をすることができ、違反行為者が警告を無視し違反行為が続く場合、公安委員会が聴聞を経て禁止命令等をすることができることとされていました。
 改正法では、公安委員会は、一定の場合には、警告がされていない場合であっても、禁止命令等をすることができることとされました(5条1項)。また、緊急の必要があると認めるときは、聴聞または弁明の機会の付与を行わないで、禁止命令等をすることができることとし、禁止命令等をした日から15日以内に意見の聴取を行わなければならないこととされました(同条3、4項)。
 また、禁止命令等に有効期間を設け、1年ごとの更新制にすることとされました(同条8~10項)。

(4) 罰則の見直し

 ストーカー行為について、非親告罪とされ、ストーカー行為及びストーカー行為に係る禁止命令等違反の懲役刑及び罰金刑の上限が引き上げられ、その他の禁止命令等違反について懲役刑が設けられました(18~20条)。

(5) まとめ

 すでに改正法を適用した逮捕事案が報道されており、ストーカーによる危害の発生防止に効果を発揮することが期待されます。