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第62回日弁連人権擁護大会(徳島)が開催される

会報「SOPHIA」令和元年10月号より

会 員 久  野   実

1 はじめに

 徳島にて、10月3日にシンポジウム、4日に人権擁護大会が開催されました。
 大会は、徳島弁護士会の人権擁護大会実行委員会の朝田啓祐委員長の開会の辞で幕を開け、同弁護士会の篠原健会長、日弁連の菊地裕太郎会長のご挨拶がありました。続けて、日弁連人権擁護委員会委員長であり、今大会の運営委員会委員長でもある松本隆行弁護士から、シンポジウム等の総括的報告がなされました。
 議長に松本委員長が就任し、議事が開始され、始めに、日弁連の小早川龍司担当副会長より、2018年度下期から2019年度上期までの事業活動報告がなされました。

2 「弁護人の援助を受ける権利の確立を求める宣言-取調べへの立会いが刑事司法を変える」

 取調べの可視化の全件への拡大、弁護人の援助を受ける権利を実質的に確立するための、取調べを受ける前に弁護士の助言を受ける機会の保障、逮捕直後からの国選弁護制度の実現、身体拘束制度の改革、起訴前を含む証拠開示制度の拡充と併せて、弁護人を取調べに立ち会わせる権利の確立の実現に向けて全力を挙げて取り組むことを決意するとともに、
(1)国に対し、検察官らは、被疑者又は弁護人の申出を受けたときは、弁護人を取調べ及び弁解の機会に立ち会わせなければならない旨を刑事訴訟法上に明定するよう改正すること、
(2)検事総長及び警察庁長官に対し、(1)が法制化されるまでの間、各捜査機関の捜査実務において弁護人の立会いを実現すること、
を求める内容でした。実際の取調べの音声を流すなど充実した質疑、討論がなされ、賛成多数で可決されました。

3 「個人通報制度の導入と国内人権機関の設置を求める決議」

(1)国際人権条約で保障された権利を侵害された者が、国内で裁判などの救済手続を尽くしてもなお権利が回復されない場合に、人権条約機関に直接救済の申立てができる手続である個人通報制度を、日本が批准する8つの国際人権条約について導入すること、 
(2)世界では、当該国に居住する者であれば国籍の有無にかかわらず、侵害された人権の回復を求めていくことのできる国内人権機関が多くの国で設置されており、日本でも1993年の国連総会で決議されたパリ原則に基づき同機関を早急に設置すること、
を内容とするものであり、賛成多数で可決されました。

4 「えん罪被害者を一刻も早く救済するために再審法の速やかな改正を求める決議」

 現行刑事訴訟法が施行されて70年が経った今もなお、再審法は何ら改正されることなく、現在に至っており、えん罪被害者を一刻も早く救済するため、国に対し、
(1)再審手続における全面的な証拠開示の制度化
(2)再審開始決定に対する検察官による不服申立ての禁止
を含む再審法の改正を速やかに行うように求める内容であり、賛成多数で可決されました。

5 おわりに

 この後、「人権のための行動宣言2019」の策定に関する件及び第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)に関する件について報告があり、今回の人権擁護大会は幕を閉じました。次回の人権擁護大会はオリンピックなどの影響から通常と異なり11月5日と6日に鹿児島で開催される予定です。