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少年野球監督
導火線に火をつける ~大野修平会員~

連載 弁護士とオフ(44)
少年野球監督
導火線に火をつける ~大野修平会員~

会報「SOPHIA」令和2年9月号より

 会報編集委員会

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 大野修平会員(60期、TMI総合法律事務所)が、少年野球チームの監督をされているとのうわさを聞き付けた会報子。涼しい事務所にお邪魔して、真っ黒に日焼けした大野会員からお話を伺ってきました。

 後日、猛暑の中、試合の取材にも伺いました。滝のような汗を流しながら試合中に少年らにゲキを飛ばす大野会員と、白球を追いかける少年らを応援してきました。

■チームの紹介をお願いします。

 名古屋市市内の小学生で構成されているチームです。学年ごとの人数構成は、6年生13人、5年生4人、4年生3人、3年生2人、2年生2人、1年生1人です。うち、6年生、2年生と1年生に1人ずつ女の子がいます。6年生の女の子がチームのキャプテンをやってくれてます。

■男女混合チームなんですね。我々の感覚からは隔世の感がありますが、そういうジェネレーションギャップはありますか。

 わがチームは頼りない男子が多いですが、女子キャプテンは頼もしいですよ。男子顔負けの剛速球を投げますしね。また、最高学年の親御さんにはチームの役員として日常の運営に携わっていただいていますが、そこでもやはり女性のパワーは強くて頼もしく、男性コーチ陣はたじたじです。ということで、現在の社会状況をそのまま映し出したチーム体制になってまして、そういう意味で違和感は全くありません(笑)。

■あ~、はいはい、なんとなくわかります。少年野球チームの監督になられたきっかけは何だったのでしょうか。

 現在は、チームを立上げて20年以上(来年で25周年です)支えてこられた代表者の下で、コーチ陣から毎年度、監督を選ぶこととなっており、今年はAチーム(6年生主体)の監督を私が拝命しました。ちなみに、私がチームのコーチになったのは、自分の子どもの入部と同じタイミングです。

■大野先生も野球をされてたんですよね。

 私は、中学校3年間と大学での軟式野球サークルぐらいの経歴しかありません。でも、中学校の最後の試合は、東海大会の準優勝校と1回戦で当たり、接戦の末、5-4で負けたぐらいの強豪チームでしたよ。

■な、なるほど。練習はどのくらいの頻度でやってますか。  

基本的に土曜日の午後と日曜日終日です。今はほぼ毎週試合の予定が入っています。

■毎週末ですか~、当会の野球部と同じですね。事務所の理解はどのように得ていますか。

 勉強とスポーツを両立させるように子どもたちに教えている以上、私も仕事は犠牲にできません(笑)。なかなか練習に参加するのが難しい時は、他のコーチの皆さんにお願いするなどして両立させています。

■最近のチームの活動を教えてください。

 夏以降、試合数も増えてきて、試合の反省点を練習で振り返るということが多いです。新型コロナの影響でしばらく活動停止しており、公式戦も夏頃から開始したところですが、今のところAチームは3勝しています。

 また、今年は特に雨も多かったことから、座学もよくやっています。座学では、守備のフォーメーションやルールの確認といった技術的な部分に留まらず、野球をする上での心構えを教えています。

■印象に残っている試合等ありますか。

 試合では、結構な点差で負けることも少なくはありません(笑)。ぼろ負けだったり、負け慣れてしまうと、負けても子どもたちが悔しそうにしないんですよ。そんな中、去年、強い相手に競る試合をして、終盤には普段練習でやらないヘッドスライディングが出るなど健闘しましたが、結果的には1点差で負けたことがありました。試合後に、子どもたちが泣いてたんですね。いつも負けてばっかりでも、心の中ではできないことを悔しいと思ってたんだなと思い、そういう競った試合になれば、泣くほど悔しい気持ちになってくれるんだなと思うと、せめて競った試合ができるところまでチーム力を上げてあげることが必要だなと思わされた試合でした。

■監督の役割を教えてください。

 コーチの皆さんの意見も踏まえて練習メニューを考えたり、定期的に選手・保護者の方にメッセージを発信したりしています。練習では、私もノックをしたり、バッティングピッチャーをしたりします。一番練習をしてるのは子どもより自分じゃないかと思うぐらいです。おかげでコーチを始めた頃より球速が20キロ以上速くなりましたし、何球投げても肩を痛めなくなりました。子どもたちに教えないといけないので、私も他のベテランコーチの皆さんからのアドバイスやYouTube等の素材を見て、自分が手本になれるよう日々勉強しています。

■勝利至上主義がいいとは思いませんが、やっぱり試合に勝たないとおもしろくないと思います。やはり試合に勝つことにこだわっていたりするのですか。

 せっかくチームに入って毎週野球をやるわけですから、やっぱり、勝たせてあげたいとは思っています。でも、結果的に勝つことではなく、勝つためにはどうするかを考えて行動することが大事だと思います。

 練習が土日にしかないので、野球に関する技術的な指導や戦術だけを教えても勝てないし、教えきれないところがあります。「勝つためにはどうしたらいいか」を個々の選手が考えて行動し、技術面以外のところで相手を上回らないと勝てないんです。練習に向かう態度、声を掛け合うこと、挨拶の仕方、相手の状況を考えて行動すること、指示される前に自分で判断して行動すること等、そういう礼儀や気配り、積極性等を教えることが、勝ちにつながる最短の道ではないかと思うようになりました。ですから、高学年の子たちには、うまくなるためにはどうすればいいかということを常に意識してもらうようにしています。新型コロナ対策、熱中症対策等も含めて、細かいところまで気を遣っていただいている役員さんへの感謝も忘れないよう、いつも伝えていますね。

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チャンスでバッターにサインを出す

■やりがいはどんなところにありますか。

 子どもたちの、「できない」が「できた」に変わる瞬間にたくさん立ち会えることですかね。伸びしろがある子ばかりで、毎週その感動を味わえますよ。また、コーチ仲間もいろいろな職業の方が多くコミュニティーの輪が大きく広がりました。普段は全く違う仕事をしながら、土日は少年野球という共通のテーマで意見を出し合い一緒に活動できることも、自分にとって大変貴重な経験になっています。

■選手から気づかされたこと等ありますか。

 最近、正捕手の子が怪我をしてしまい、代役の子にキャッチャーをやらせることになりました。その子は、代役で出ると決まってから必死にキャッチャーの練習をしていました。でも、いざ試合になると、たくさん盗塁されてしまいました。私は、まぁしょうがないな、と思っていましたが、試合後の反省会の時に、その子は、目に涙を浮かべて悔しがっていました。その姿を見て、むしろ自分は、できることとできないことを無意識に決めつけ、チャレンジさせることを怠っていたのではないかと、ハッとさせられました。

 でもその子は、翌々週の試合では盗塁を刺したんですよ。反省を生かして成長する姿を目の当たりにして、とても嬉しく思いましたし、こういう子が増えればいいなと思っています。

■いやぁ、いい話ですね。そういえば、先生のお子様と他の選手とを分け隔てなく接する必要があるかと思いますが、そのあたりのご苦労はありますか。

 自分の子は基本的に全体練習では他のコーチ陣に指導を任せ、自分ではなるべく教えないようにしています。自分の子は平日に時間があれば見てあげることができますし、親ではなく他人のコーチからの指導は、やはり貴重な機会だと思っています。ただ、他の子もやはり土日だけでは物足りない時もあり、夏休みの平日に朝練をしたり、朝に素振りを見てあげたりしています。子どもたちからすると、土日に加えて平日も私やコーチ陣の顔を見るのは嫌かもしれませんが(笑)。

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バッターいいよー!!

■毎朝朝練ですか...、大変ですねぇ。理想の指導者像ってありますか。

 指導者なんておこがましいです。そんな意識はありません。多くの経験豊富なコーチ陣にむしろ私が指導をいただいています(笑)。私の意識としては、指導者というよりも、子どもたちが持っている「導火線」に火をつけてあげる役割という感じですね。導火線の位置がわからなかったり、見つけても湿ってたりして苦労しますが(笑)。ただ、一度火がついた時の子どもたちのパワーは軽く大人を超えます。子どもたちが、やればできるということに早く気づき、野球以外でも将来その成功体験を生かしていろいろなことにチャレンジしてくれれば何よりで、今はそのサポート役というイメージをもっています。

■少年野球チームにお子さんを入れることを検討している会員に向けて一言。

 子どもたちに野球を教えていて、ふと、野球に限らないことを教えていることに気づきます。自分から動く、予測を立てて行動する、声を掛け合うなどですね。生きていく上でも重要なことを、野球を通じて学ぶことができるのではないかと思っています。また、野球は難しいスポーツだと思いますが、その一方で、自分の個性に応じて目標設定をたくさん見つけられるスポーツでもあります。ホームランを打ちたい、盗塁をしたい、かっこよくスライディングを決めたい、バントを決めたい、速い球を投げて三振を奪いたいなど、お子さんにたくさんの成功体験をさせるには、うってつけのスポーツだと思っています。ぜひ、わがチームに入ってください!そうだ!今度試合があるので、(差し入れを持って)見に来てくださいよ!

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(というわけで、会報子は8月30日に守山区のグラウンドで行われた公式戦の応援に行ってきました)

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この日の最高気温は37.1℃!

■おはようございます!今日もやばいぐらい暑いですね。今日はエースの子(背番号1)は投げないんですね?

 エースに限らず、投手はやる気のある子にどんどん経験させたいと思っています。その意味では、当チームは他チームより多くの子が投手の経験をしていると思います。オーダーは選手のその日の調子や練習状況と私のインスピレーションで決めています(笑)。

(他チームとの試合。大野会員は、試合前に選手を集めてミーティングしたり、試合途中では、代走、代打、ピッチャー交替を指示したりするなど、監督業をそつなくこなして試合に臨んでおられました(ちなみに、会報子は試合途中でそつなく差し入れアイスを買い出しに行きました)。どちらのチームも大人からも子どもからも声が飛ぶ熱戦でしたが、試合は最終イニングを迎えた時点で当チームが0-4とリードを許す展開。最終の当チームの攻撃で1死満塁のチャンスを掴むも、2点を返したところで惜しくもゲームセット)

■うーん、もう少しで勝てそうでしたが‥‥。本日の試合について一言お願いします。

 みんなよく動けていましたが、取材で緊張?したのか、あと一歩届きませんでしたね。午後の練習で復習したいと思います。

 ところで、まったくお気遣いは不要ですが、そのクーラーボックスの中身はひょっとして差入れですか?

■選手の子たちの分だけでなく、大人の方の分も買ってきましたので遠慮なくどうぞ!

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(試合は残念ながら負けてしまいましたが、差し入れのアイスを皆様に召し上がっていただきました。道具も綺麗に揃えられていたり、私たちに挨拶をしてくれたり、選手たちはとても礼儀正しく、規律正しく動いていたことが印象的でした。また、それを支える大野会員他のコーチ陣の皆さん、親御さんにも頭が下が りました。暑いから涼しい部屋で過ごそう!なんて考えた自分を戒めつつも、午後の練習の取材は丁重にお断りし、帰途に着いた会報子でした)