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愛知から世界へ(36) 続 サンパウロ 国外就労者情報援護センターに赴任して

会報「SOPHIA」 平成29年8月号より

会員 永井 康之

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 2015年からブラジル連邦共和国のサンパウロ市にある国外就労者情報援護センター(CIATE)に専務理事として赴任しています。早いもので、赴任から3年目に入っていよいよ次の3月には帰国です。言葉にも慣れ、赴任直後から通い始めた語学学校はすでに上級コース。先日は日系社会の歴史についての書籍の日本語版の作成に共訳者として関わったことで、表彰していただきました。慣れたと思ったらもう帰国が近くて寂しいです。
 CIATEは日本に向かう日系ブラジル人に対する情報提供のための組織です。リーマンショック以降減少を続けていた在日ブラジル人数は上昇に転じました。一方で、在日ブラジル人については2つの問題があります。

  

1 日系4世問題

 2016年6月にブラジル日系社会は当時の梅田邦夫駐ブラジル大使に日系4世の在留資格への配慮を求める要望書を出しました。同年9月のCIATEの国際シンポジウムでは3世及び4世の日系人に対する意識調査の結果を公表し、10月の日系人大会では4世の在留資格に配慮を求める宣言が採択されました。
 本年2月2日の衆議院予算委員会で安倍総理大臣が積極的な答弁をしたのを契機に、4世の在留資格につき日本政府内部でも具体的な検討が始まったようです。CIATEにも多くの問い合わせがあり、資料提供やヒアリングの対応をしました。5月の中南米日系社会との連携に関する有識者懇談会報告書や、自民党一億総活躍推進本部の提言書にも、4世の在留資格について積極的な提言が含まれていました。4世の在留資格に関しては近々パブリックコメントが行われ、年内に運用開始の見込みだそうです。

2 子弟の教育問題

 こうした動きの一方で、在日ブラジル人子弟の教育問題があります。2014年の調査では、公立学校でポルトガル語を母語とし、日本語指導を必要とする生徒は8300人でした。ポルトガル語を母語とする者の大半はブラジル人ですが、この年代のブラジル人子弟は全体で2万5000人です。公立学校に通っているのは子弟の一部であることからすれば、日本語指導が必要な子弟はもっと大勢いることになります。さらに、発達障害と判断されて特別支援学級に入れられるブラジル人子弟が日本人と比べて何倍も多くなっています。ある学校では12人の子どものうち10人が外国人でした。これはブラジル人子弟に限らず、日本語以外を母語とする外国人児童に対する診断が適切に行われていないことに起因すると考えられます。この問題についても、日伯双方からのヒアリングに応え意見交換会に出席するなど、意欲的に取り組んでいます。日伯両国政府の関心も高く、6月にはブラジルの連邦上院で公聴会が開催され、日本でも外国人児童教育の充実などの対策を打っています。