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リオデジャネイロ・オリンピック後のブラジル:現地からの報告

会報「SOPHIA」 平成28年9月号より

国際委員会 委員  大嶽 達哉

「愛知から世界へ」、今回は、ブラジルから、現地の状況を報告いたします。

  1.  オリンピックの成功
     南米初の開催となるリオデジャネイロ・オリンピックが、成功裏のうちに、8月21日閉幕しました。開催前には、準備の遅れ等が報道されていましたが、日本のように用意周到に準備をしなくとも、本番となると盛り上げてしまう国民性もあって、大成功に終わったといってもよいでしょう。
     これまで、ブラジル国内で、オリンピックは知名度があまりなく、開催前にはあまり話題になっていませんでした。しかし、開幕すると、オリンピックがどのような大会なのか、次第に知られるようになり、日程がすすむにつれて、チケットの販売やテレビの視聴率が急激に上昇しました。特にサッカーで金メダルを初めて獲得したことが一つの大きな転機になったようです。

  2.  大統領の弾劾、罷免
     その一方で、ブラジルの政界はそれまで続いていた混乱がひと段落しました。国会の弾劾手続により職務停止となっていたジウマ・ルセフ大統領が、8月31日、正式に罷免となりました。これにより、政権は、13年に及んだ左派の労働者党(PT)から、中道寄りのブラジル民主運動党(PMDB)に移りました。
     テメル新大統領には、政治的、経済的混乱の収束が求められています。

  3.  経済不況の深刻化
     先に述べたオリンピックのブラジル国内での位置づけから、その経済効果は非常に限定的なものです。このことは、ブラジル経済には当然の想定として織り込み済みのものであり、その開催前から、開催に便乗して投資する動きはあまり見られませんでした。
     ブラジル経済は3年ほど前から停滞しており、特に、好況期の過剰与信などにより、個人消費が非常に冷え切った状態にあります。
     その結果、過去にないほど良好に維持していた雇用もついに悪化するに至り、失業者が増加しています。このことが、個人消費の悪化に拍車をかけています。街を歩けば、路上生活者が増えていることが目につきます。進出日本企業の撤退、縮小が相次いでいます。

  4.  日本への就労の増加
     こうした経済状況を受けて、日本へ就労のため渡航する人が増加しています。これまでは、日本から募集をかけてもなかなか人が集まらない状況がありましたが、今ではすぐに応募で一杯になるようです。
     ご承知のとおり、日系人三世までは、就労分野に関わりなく査証が発行されます。そのため、日本で就労するブラジル人は、日系人かその家族がほとんどです。しかし、現在日系人の就労年齢の中心は、三世から四世に移りつつあります。四世は、他の外国人と同じ査証の扱いですので、このままですと、近い将来、日本で就労するブラジル人は、経済状況と関係なく減少していくことになります。

  5.  結語
     ブラジルは、2022年に独立200年を迎えますが、なかなか早期に経済状況が改善する兆しはみえません。
     これまで、日本とブラジルは、移民・日系人を介して、他国とは異なる深い繋がりを維持してきましたが、今後はどのように変化していくのでしょうか。注視していくことが必要だと思われます。