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野宿者総合法律相談開催される

会報「SOPHIA」 平成28年9月号より

貧困問題・多重債務対策本部 委員  伊藤 真悟

  1.  9月11日午後6時30分から若宮大通公園にて、野宿者総合法律相談が開催されました。
     例年と同様、公園で行われる炊き出しと同じ日に開催されたため、相談開始前から公園には野宿者の方々が集まっていました。
     法律相談に参加した会員が、仮設テント内に設けられた相談ブースで相談を受けていましたが、ブースの座席が足りなくなるほどの大盛況で、相談が途切れることはありませんでした。
     会員のみならず、修習生やインターンの大学生も参加され、なかなか良い経験を積んでいただくことが出来たのではないかと思います。

  2.  相談内容をみてみると、債務整理や生活保護といった法律問題から、役所の対応が悪いといった一般的な苦情まで含まれており、幅広い内容となっていました。私が対応した中では、最近になって、10年以上前の債務の請求が来るようになったという相談もありました。
     見るべき資産がない人の場合、破産申立に要する費用等を考えると、自己破産を申し立てるべきかどうか悩ましい場合もあります。しかし、たとえ差し押さえられるような財産がなくても、消費者金融から請求の電話がかかってくること自体苦痛で耐えられないという人や、本来であれば消滅時効の援用で対応できる債務であっても、請求されると言われるがまま支払ってしまう人もいますので、相談を受けた弁護士は、相談者から丁寧に事情を聞きとった上で、今後の方針を示す必要があると思います。

  3.  法テラスについても知名度が非常に低く、生活保護受給者の場合には法テラスが立て替えた弁護士費用の償還が免除されるということや、生活保護の申請同行にも法テラスを利用出来るということはあまり知られていない様子でした。情報源に乏しい野宿者の方に、弁護士会や法テラスの活動内容を知ってもらうためには、今回のような草の根活動が一番効果的だと感じますので、このような活動を今後も継続していくことの必要性を実感しております。

  4.  相談者の属性をみてみると、大半が生活保護を受給しながらアパート暮らしをしている人でした。その中には、精神障害ないし軽度知的障害を有すると思われる方もいて、障害と貧困は分けがたく結びついていると感じました。知的障害を有すると思われる方等から事情を聴取するのは容易ではありませんが、本来受給できるサービスを知らないままに過ごし、困難に直面している方を1人でも少なくするためには、弁護士や市の職員が制度の内容等を分かりやすい言葉で説明し、相談者の方から丁寧に事情を聞きとる必要があると思います。
     また、貧困状態にある多くの人は頼れる家族や友人もなく、孤立してしまっています。貧困というのは金銭の欠乏だけでなく、人間関係の欠乏も含むと言えるでしょう。
     そうした人にこそ、法的な援助や助言が必要なのではないでしょうか。