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「ヘイトスピーチ勉強会」開催される

会報「SOPHIA」 平成28年9月号より

人権擁護委員会 国際人権部会 部会員 金 銘愛

  1.  はじめに
     5月24日、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(以下では「ヘイトスピーチ解消法」と言います)が成立しました。
     同法は、日本で初めての反人種差別理念法としての意義を有しているところ、他方で日弁連をはじめとする各種団体から問題点を指摘されています。また、同法が成立した直後の5月29日、名古屋市内においてはヘイトデモが実施されました。
     そこで、人権擁護委員会国際人権部会では、ヘイトスピーチを巡る現状の問題を理解することを目的として、人権擁護委員会委員を対象に、8月31日にヘイトスピーチに関する勉強会を開催しました。

  2.  勉強会の内容
    (1) 日弁連意見書の概要のおさらい
     日弁連では、平成27年5月7日に「人種等を理由とする差別の撤廃に向けた速やかな施策を求める意見書」を発表しています。
     当該意見書では、国に対して①人種差別に関する実態調査の実施、②人種差別禁止のための基本法の制定、③政府から独立した国内人権機関の設置と個人通報制度の導入を求めています。
    (2) 成立したヘイトスピーチ解消法の問題点
     新しく成立したヘイトスピーチ解消法には、主に、以下のような問題点が存在します。
     ① 保護対象者を「適法に居住するもの」に限定している。
     ② 禁止条項がない。
     ③ 「不当な差別的言動」からの保護の対象に、アイヌ、琉球・沖縄などの人種的・民族的マイノリティが入っていない。
     ④ 解消すべき対象が「不当な差別的言動」に限られている。
     特に、①の点は、反差別法の中に差別的要素を混入させるものであることから、大きな批判を浴びています。
    (3) 地方自治体の具体的事例
     日本におけるヘイトスピーチは、在日コリアンが多数生活する地域を中心に全国各地の公開・公的な場所で集会やデモ行進という形で行われてきました。それゆえ、ヘイトスピーチを行おうとする者について、公共施設の利用を制限することが重要な課題となります。
     本勉強会では、ヘイトスピーチを行おうとする者の公共施設の利用に関する各自治体での先例を報告し、各自治体がどのような場合に公共施設の利用を制限しているのかを比較検討しました。また、1月15日に大阪市で制定された「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」についても紹介しました。
    (4) カウンターの見守り弁護団
     ヘイトデモを行う者に対抗する者を「カウンター」と呼びますが、本勉強会では「カウンター」の見守り弁護団のご経験を有する会員にもご参加いただき、ヘイトデモ現場ならではの問題点について、臨場感あふれるコメントをいただきました。

  3.  おわりに
     本勉強会では、今後、ヘイトスピーチの撲滅に向けてどのような活動が求められるかについて活発な意見交換がなされました。
     人権擁護委員会では、今後もヘイトスピーチを巡る問題について、取り組んでいく予定です。