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紛争解決センターだより 「ハーグ案件あっせん成立について」
会報「SOPHIA」 平成28年7月号より
紛争解決センター運営委員会
国際ADRチーム員 服部 由美
愛知県弁護士会紛争解決センター(以下、「当センター」といいます。)は、ハーグ条約(「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」。日本では平成26年4月に発効。)に係る協議のあっせん(以下、「ハーグ条約対応ADR」といいます。)事業について、平成27年4月より外務省から委託を受けておりますが、先般、当センター初めてとなる案件(以下、「本案件」といいます。)において、無事、和解が成立しました。
ハーグ条約対応ADRは、ハーグ条約実施法(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律)に基づき外務大臣の援助決定を受けた事案を対象とし、子の返還または面会交流について、話合いによる合意形成を目指します。事案の性質上、一方当事者は通常日本国外に居住しており、また、ハーグ条約は当事者の国籍を問わず適用されるものの、異なる国籍、言語、法・社会・文化的背景を有する当事者間での紛争となることが多々想定されます。当センターの運営規則では、ハーグ条約対応ADRのこうした特徴に鑑み、・原則として日本語及び英語で対応する・男女2人のあっせん人による共同あっせんとする・遠隔地居住の当事者はスカイプで期日に参加できる等の特則が設けられています。
本案件でも、スカイプ利用の下、原則として両当事者同席で、日本語及び英語をもって、手続きが行われ、冒頭に申し上げた通り、無事、和解の成立をもって終了することができました。
ハーグ条約実施法は、子の返還事件を審理する裁判所を東京および大阪の家庭裁判所に集中させており、また、外務省が委託しているADR機関も全国で7機関(うち3は東京)しかありません。
当センターのハーグ条約対応ADRはまだ緒についたばかりといえますが、国際都市、名古屋・愛知に所在する当センターとして、今回の経験は、ハーグ案件のみならず、国際離婚事案などにも、今後、活かされ得ると思われます。