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6月2日講演会 「男女共同参画:なぜ考えなければならないか、
どのように実現するか」を聞いて
~「問題を個人に還元しない」ということ~
6月2日講演会 「男女共同参画:なぜ考えなければならないか、
どのように実現するか」を聞いて
~「問題を個人に還元しない」ということ~
会報「SOPHIA」 平成28年6月号より
男女共同参画推進本部 委員 岡田 香世
- 昨年10月に男女共同参画推進本部委員となってから早くも半年以上が過ぎました。
「男女共同参画」というと、なんだかよくわからない、実感も無いし自分には関係ないだろう、と思いたくなる方もいるかもしれません。推進本部では当初から、率直な意見を含め、様々な立場や角度からの意見をもとに活発に議論が重ねられてきました - 男女共同参画が阻害されているとき、現象として表面に現れてくる不都合は個人によってさまざまで、そこだけを見ていても問題を一般化・抽象化して把握するのが難しいと感じています。私自身、議論の際に個人的な事情を交えて発言しようとして、これは私個人の私的な問題にすぎないのではないかと躊躇を感じる場面が少なくなくありませんでした。このように、この問題については議論すること自体に他には無い特殊な困難さがあり、考えていてもなんとなく足元が固まってないような違和感を覚えることもありました。
しかし、この度の田村教授の講演は「男女共同参画とは何か」「なぜ考えなければならないか」がストレートにテーマとなっており、この問題を考える際の重要な視点や方向性に改めて気付くことができ、考えが整理された思いでした。
お話のうち特に根本的で重要だと感じたのは「問題を個人に還元しない」という視点です。男性に比べ女性の社会進出が進まない理由を、女性個人の私的な個別事情に求めている限り、男女共同参画は実現しませんし、そもそも実現の必要性を見出すこともできないでしょう。
問題を個人に還元せず、女性の意識や行動を決定付けている要因を社会の側にあると認め、これらを変えれば女性の社会との関わり方も変わり得る、という田村教授の示された視点は、男女共同参画について考えるときの出発点であると同時に核であると感じました。 - 上記のような視点は推進本部が取り組んでいる基本計画の制定の際に必要となるだけではありません。むしろ出来上がった基本計画を受け止め、実践していくときに、この視点が会員全体に広く共有されているかどうかにより、実質的な男女共同参画の実現に大きな影響がでるのではないかと感じます。今後も議論は続き、具体的な施策の検討も順次行われていきますが、会員の皆様には上記のような視点をもって議論がされていることについて広く知っていただきたいと思います。また、このような視点を前提とすることについてそもそも疑問や異論があるときには、積極的に議論に加わっていただき、男女共同参画の実現の必要性について正面から考えていただければと思います。
- 講演会の最後には質疑応答がありました。質問者からの「意思決定に関与する女性の数を増やすことがゴールなのではなく、その上で男女が共に意見を交わし、議論し、決定し、行動することで相互に理解を深め、多様な立場の人それぞれが生きやすい社会を実現することがゴールではないか」という発言には田村教授も大きく頷かれていました。
女性が生きやすい社会は同時に男性にとっても生きやすい社会となるべきです。基本計画や施策自体を目的とするのではなく、その先に、全ての会員が個々の抱える事情に関わりなくのびのびと活躍できる社会を実現することを目指して、今後も議論を続けていきたいと思います。