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「なぜ考えなければならないか、どのように実現するか」

男女共同参画に関する講演会
「なぜ考えなければならないか、どのように実現するか」

会報「SOPHIA」 平成28年6月号より

日 時 6月2日 12:00~13:00
場 所 弁護士会館5階ホール
講 師 名古屋大学大学院法学研究科 田村 哲樹 教授

男女共同参画推進本部 委員 篠田 連太郎

1 はじめに

 当会では、会員が性別にかかわりなく個性と能力を発揮できるよう、昨年、男女共同参画施策基本大綱が制定され、男女共同参画推進本部が設置されました。そして、現在、男女共同参画推進基本計画の制定作業が進められております。
 そのような中、会員の男女共同参画に対する理解・関心を深めるため、各種の男女共同参画に関する活動・講演をされている田村教授にご講演頂きました。以下、その内容をご紹介します。

2 講演内容

(1) 男女共同参画について

 男女共同参画とは、英語では「gender equality」といい、性別にとらわれずに一人一人が平等に扱われるべきだとする考え方のことをいいます。男女共同参画を考える場合には、問題を「個人」に還元しない見方をすることが重要となります。そのため、まず、「社会における制度又は慣行」が特定の考え方を具現することで個人の「選択」や「能力の発揮」が妨げられていることがあるということに注意をする必要があります。そもそも「選択」や「能力の発揮」が社会における制度又は慣行によって作られていることがあることにも注意が必要となります。例えば、法曹に男性が多いのは、女性には「できない」「向かない」というイメージが社会に共有されていないかといったことに注意をしなければなりません。また、ある組織において意思決定にどの程度女性が関与しているかを見ることも重要とのことでした。これは、ある組織の中に占める女性の割合が多くても、意思決定を男性が行っているのであれば、男女の関係は平等とはいえないからです。

(2) 男女共同参画を実現するためには

 男女共同参画を実現するには、制度的な次元と非制度的な次元での取組みをしていくことが必要になるとのことでした。制度的な次元での取組みとしては、ポジティブ・アクション(積極的改善措置)の一つである、意思決定の場において女性に議席等を割り当てるクオータ制(割当制)を採用することが挙げられました。これは政治の場において採用されているものですが、その他の組織にも応用が利くとのことでした。もっとも、クオータ制を採用すること自体を目的とするのではなく、採用することを契機として多種多様な議論が生み出されるべきであるとのことでした。次に、非制度的な次元では、男女共同参画が男女の問題である以上、「女性の変化」だけでなく、「男性の変化」を促進する取組みをしていくことが必要であるとのことでした。

3 最後に

 当会における男女共同参画は、女性会員だけの問題ではなく、男性会員だけの問題でもなく、あくまで当会全体の問題として考えられなければなりません。そして、当会における男女共同参画を推進していくためには、多くの会員から多種多様な意見が出されることが肝要です。本講演を契機として、より多くの会員に当会の男女共同参画に関心を持っていただき、活発な議論をしていきたいと思います。