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愛知から世界へ(28) 【国際委員会企画】ラオス国司法制度視察旅行のご報告
~司法大臣にも表敬訪問してきました!~
愛知から世界へ(28) 【国際委員会企画】ラオス国司法制度視察旅行のご報告
~司法大臣にも表敬訪問してきました!~
会報「SOPHIA」 平成28年4月号より
国際委員会 委員長 小川 晶露
3月16日~21日、国際委員会の内外から当会会員12名が、小川宏嗣会員を団長として、ラオス人民民主共和国への視察旅行に参加し、うち8名はバンコク(タイ国)へのオプショナルツアーにも参加しました。
国際委員会の司法制度視察旅行の歴史は10年に及び、これまで、中国・韓国・ベトナム・カンボジア・ミャンマー・ブラジル・ウズベキスタン・モンゴル・インドネシア等へ訪問しました。
何よりも、当会会員がJICA長期専門家として現地国に赴任したり、当委員会が英語講義を担当した名古屋大学大学院法学研究科の学生(当時)が、卒業後に出身国で一定の要職に就いたりしており(司法大臣・事務次官、最高裁裁判官等)、その繋がりを利用して視察旅行を企画するため、通常の個人旅行では訪問できないような司法機関等(最高裁・法務省・弁護士会等)にも訪問して知見を得ることができるのが、この旅行の大きな魅力となっています。
国際委員会 委員 玉垣 正一郎
1 はじめに ~ 視察旅行の概要 ~
ラオスは人口が約700万人、国土が日本の約63%、その多くを高原や山岳地帯が占めるASEAN唯一の内陸国です。2014年10月からは当会の棚橋玲子会員がJICA長期専門家として活躍しています。
【主な日程】
- 3月17日:司法省、司法研修所、ラオス国立大学日本法センター訪問、弁護士との懇親会
- 3月18日:首都裁判所、弁護士会、日本法センターの学生との懇親会
- 3月19日~21日:ヴィエンチャン、ルアンパバーン、バンコク観光
2 司法省・司法研修所
17日の午前中は、司法省と司法研修所への訪問時間が重複したため、2組に分かれての訪問となりました。
司法省への訪問では、友好的な雰囲気のもと、小川宏嗣団長他5名がブンクート・サンソムサック司法大臣に表敬訪問を行い、意見交換が約40分間実施されました。その中では、ラオス司法省の多くの官僚が日本国での留学の機会を得て現在の実務に役立てているとのお話がありました。かつて国際委員会が、名古屋大学の英語講義で受け持った卒業生の多くが、現在は、ラオス司法省で活躍していることが分かりました。
《司法大臣(中央右)と小川団長(中央左)》
他方、ラオスでは、裁判官、検察官及び弁護士への人材輩出を強化するため、2015年4月に司法研修所が設立され、2016年1月に第1期125名が卒業しました。
そして、司法研修所での上位成績者から順に法曹三者の進路を選択できるとのことであり、検察官、裁判官、弁護士の順に人気があるそうです。また、現在、研修生には月額約9万キープ(約1200円)が支給されているものの、生活費としては不十分であるため、親族の援助などによって生活しているとのことです。
3 ラオス国立大学日本法センター
同日午後は、ラオス国立大学日本法センターにおいて、日ラの逐次通訳にて、大槻隆会員の「日本の弁護士自治」、加藤裕治会員の「日本の司法制度改革」、私の「日本の弁護士の活動領域」に関する各講義が実施されました。
質疑応答では、学生から「日本の弁護士の活動はラオスと比べて自由である」、「ラオスでは弁護士の地位は裁判官や検察官よりも下に見られている」といった話がありました。
また、学生からは、「日本ではロースクール卒業生と予備試験合格者の間には格差があるのか?」、「予備試験の人数をもう少し増やした方がいいのではないか?」といった、鋭い質問もありました。
《ラオス国立大学にて、講義風景(上)集合写真(下)》
4 ヴィエンチャン首都裁判所
翌18日の午前は、ヴィエンチャン首都裁判所を見学しました。
ラオスの裁判は、刑事、民事、商事、労働、家族に分かれます。首都裁判所が2015年の1年間で新たに扱った事件は約1500件、そのうち約70%が解決したそうです。比較的多い事件は、交通事故、薬物、窃盗とのことです。
判決は法律上公開されることになっており、以前は判例集が出版されていたそうですが、現在は予算がないため、その出版がストップしているそうです。
5 ラオス弁護士会
午後からはラオス弁護士会を訪問して、ラオス弁護士会について、率直なお話を伺うことができました。
ラオス弁護士会の会員は現在約200名であり、会費は年間125米ドルとのことです。
公務員の平均月給350米ドルであるのに対して、新人弁護士は月給500米ドル、一般的な弁護士は月給1000~2000米ドル、ベテランになると月給2000~5000米ドルとのことですので、弁護士の年収は平均よりは高いようです。なお、外国企業の案件を取り扱う弁護士のタイムチャージは高いところだと1時間400米ドルとのことです。
6 JICAプロジェクト事務所訪問
夕方には、棚橋会員が現在執務しているJICAプロジェクト事務所を訪問しました。
いろいろなお話をうかがうことができましたが、現在、民事系を中心としたラオス基礎法の草案を作成しているとのことであり、『ラオス国のボアソナード』との声もあがったりして、JICA長期専門家のお仕事の素晴らしさを教えていただくことが出来ました。
また、現地アレンジをして下さった棚橋会員には心より御礼申し上げます。
《JICAプロジェクト事務所にて棚橋会員(左)と》