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性暴力救援センター日赤なごや「なごみ」開設記念シンポジウムに 参加しました

犯罪被害者支援連載シリーズ
性暴力救援センター日赤なごや「なごみ」開設記念シンポジウムに 参加しました

会報「SOPHIA」 平成28年3月号より

犯罪被害者支援委員会 委員
林 優

 1月5日、名古屋第二赤十字病院に性暴力救援センター日赤なごや「なごみ」が開設されました。「なごみ」とは、性暴力被害に対する相談・治療・警察通報などの医療・司法・行政にまたがる総合支援を、拠点病院1か所(ワンストップ)で被害直後から中長期・回復まで継続して提供する施設です。現在は、有償ボランティアの支援員20名と被害者支援専門看護師(SANE)21名が24時間体制で対応しています。

 当会も後援して、3月6日、表題のシンポジウムが開催されました。冒頭、開設に至る経緯等の報告がありました。開設までの準備期間は約2年、病院内での場所確保から始まり、救急医・産婦人科医等の意見を集約し、他のワンストップセンターに学びながらガイドラインを作成するなど、開設に至るまでの様々なご苦労が報告されました。現在までの利用実績は、電話相談は1月30件、2月30件、来所相談は1月12件、2月9件、診察数は1月10件、2月3件で、他のワンストップセンターの状況に比べ利用数が多く、今後も各所との連携強化、24時間体制の確保・継続、被害者への経済的支援充実に向けた活動等を続けていくとのことでした。弁護士との連携としては、子どもの権利委員会、両性の平等に関する委員会及び犯罪被害者支援委員会の女性会員の有志で「なごみ」の連携弁護士として名簿を作成し、法的支援につなぐ体制を整えています。

 記念講演として、英国セントラル・ランカシャー大学のニッキー・スタンレー教授が「若者たちの交際関係における性暴力~ポルノやインターネット性虐待(セクスティング)との関連」というテーマで講演されました。スマートフォンが広く普及し、以前は規制されていたような情報にも監視なく広範囲にアクセスが可能となり、若者の交際関係における性暴力がここ10年で急激に変化したこと、EU5か国の若者4500名を対象とした調査結果によれば、ポルノを頻繁に見る若者ほど交際相手に対し性的な強制や虐待をする傾向が高いこと、セクスティングと呼ばれる行為(交際相手と性的な画像やメッセージを携帯電話で送受信すること)をすることと交際相手への性的な強制等と有意な関連性があったとの研究結果などが報告されました。セクスティングについては、経験者の多くが「変なことだけれど、愛され、求められている」と肯定的に感じているとのアンケート結果がある一方で、復讐や支配の手段として意図に反して第三者に開示されるなどEU諸国においても深刻な問題となっており、リベンジポルノとして社会問題化している日本と同様の状況であることがわかりました。後半のパネルディスカッションでは、インターネットのアクセス規制等で若者の性暴力被害を防ぐのには限界があるため、若者への粘り強くオープンな性教育が必要であって、ポルノの非現実性や潜在する女性蔑視の価値観の指摘、セクスティングは自らポルノを創出することであるとの自覚を促すと共にメディアリテラシーを増強する必要がある等、性暴力被害防止のための議論が活発になされました。また、性暴力被害にあった際に被害を申告できるか否かは、「そこに行けばなんとかしてもらえる」という安心感を伝えていくことが大切であるため、なごみ等の施設のサービスの体制・受けられる支援内容の周知が重要であるとの指摘があり、非常に活発なパネルディスカッションとなりました。