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リニア新幹線建設予定地(春日井周辺)視察
会報「SOPHIA」 平成28年2月号より
公害対策・環境保全委員会 委員
伊東 正裕
- 当委員会では、以前から、リニア新幹線の建設によって生じる環境への影響について、検討や議論を重ねてきました。昨年4月には、当委員会委員及び岐阜県弁護士会会員により、合同で、岐阜県中津川周辺の視察を実施し、地下水や植生、景観等への影響などを調査しました。
そして、1月19日、リニア新幹線の建設が周辺の土地にどのような影響をもたらすのかについて考察するため、リニアを考える愛知県連絡会事務局・川本正彦氏の案内で、春日井市内のリニア建設予定地近辺に点在する亜炭鉱跡等の視察を行いました。 - 視察では、出川町内の竪坑跡やちびっこ広場内陥没地点、松本町内の竪坑跡陥没地点、神明町内の横坑跡、上町町内の横坑跡及びリニア新幹線坂下非常口予定地の南等を順次確認しました。
- 今回訪れた春日井市及びその周辺では、戦前戦後を通じて、亜炭が盛んに採掘されていました。亜炭とは、石炭に比べ炭化の低い鉱物で、戦争により石炭の不足した状況下で燃料として重用されてきた鉱物です。比較的地表に近い深度で、小規模な竪坑が多数密集して採掘されてきたことから、近年、廃坑道の崩落に伴う陥没現象が頻発しており、リニア建設工事に伴う振動や地下水脈の変化がさらなる崩落を引き起こす可能性が懸念されています。
- JR東海が実施した環境影響評価では、亜炭鉱跡の存在を認めつつ、リニア新幹線のトンネルはこれよりも深いところを通過すると考えられることや、工事実施に先立ち空洞調査を行い、必要に応じて充填等の対策を講じることから地盤沈下は起こらないものと予測しています。しかし、地下空洞の正確な把握には限界があることや、先に挙げた工事に伴う振動や地下水脈の変化等に伴う影響は未知数です。当委員会では今後も引き続きこの問題について取り組みを続けます。
出川町内空気坑跡
出川町内竪坑跡
(遠方空地):坂下非常口予定地