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犯罪被害者支援委員会 名古屋保護観察所訪問

犯罪被害者支援連載シリーズ
犯罪被害者支援委員会 名古屋保護観察所訪問

会報「SOPHIA」 平成28年1月号より

犯罪被害者支援委員会 委員
阿讃坊 明孝

 平成27年12月3日、当委員会は、名古屋保護観察所を訪問し、同所所長をはじめ、保護観察官や保護司の方と、被害者支援に関する意見交換及び情報交換を行った。

 保護観察所は、保護観察となった者等(刑事事件では保護観察付執行猶予・刑務所からの仮釈放、少年事件では保護観察処分・少年院仮退院)に対し、社会復帰を支援する。それに加え、同所は、「被害者の存在を直視しないまま、加害者の真の改善更生はあり得ない」との考え方の下、被害者支援についても施策を実施しているので、紹介する。

1.保護観察所による主な被害者支援施策

 保護観察所による主な施策としては、被害者からの相談業務等の他、以下のものがある。

  • (1)被害者等通知制度
     この制度は、加害者の保護観察の開始・終了や保護観察中の処遇状況等について、被害者の申出により、書面等で通知を実施する制度である。
     同様の制度としては、刑務所・少年院での処遇状況や釈放・出院等の通知、地方更生保護委員会での仮釈放審理の開始及び結果の通知の制度が存在している。それぞれ、申出先が異なるものの、上記通知制度を利用することにより、刑の執行、仮釈放及びその後の保護観察に至るまで、途切れなく加害者に関する一定の情報を知ることが可能となる。
  • (2)心情等伝達制度
     被害者の申出により、被害者担当の保護観察官が、被害者から被害に関する心情を聴取し、加害者を処遇する保護観察官が、それを加害者へと伝える制度である。
     被害者の実情を直視させて反省を深めさせることが主眼であるが、単に伝えるだけではなく、加害者が述べたことを被害者に報告することも可能である。一般論ではあるが、仮に被害者と加害者が望むような場合には、慎重な配慮の末、一定の対話や対面を実施する可能性もあり得ると考えられる。

2.施策の利用状況

 名古屋保護観察所において、被害者等通知制度については、平成26年のデータでは356件の通知書送付が実施され、一定程度の利用がなされている。しかしながら、心情等伝達制度の利用については、平成26年が0件、平成27年も数件程度とのことであった。
 全てのケースで利用しなければならない制度ではないが、利用件数が少ない理由として、制度についてまだ十分に理解されていないことも、その背景にあると思われる。
 少なくとも、犯罪被害者の相談業務を担当するに当たっては、各被害者のニーズに対応できるよう、弁護士が各種制度について認識しておくことが必要であると感じた。

3.保護観察所との連携

 最後に、名古屋保護観察所の方々は、当委員会の訪問に対し非常に好意的に対応して下さった。今後も、被害者支援について互いに協力関係を築いて行きたいと考えている。