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子どもの事件の現場から(151) いじめ予防出張授業の今

会報「SOPHIA」 平成28年1月号より

子どもの権利委員会 学校生活チーム チーム員
西口 誠

いじめ予防出張授業とは

当委員会では、平成25年度から、いじめ予防出張授業に取り組んでいます。

 いじめ予防出張授業とは、小学校又は中学校(対象学年は、原則小6から中2までとしています)に対し、1クラスにつき1名ないし2名の弁護士を当委員会から講師として派遣して、1コマないし2コマのいじめ予防について考える授業を行うというものです。

 いじめの相談を受けることもある弁護士が、人権の話とも結び付けていじめ予防の授業をすることで、子どもたちにいつもとは違う観点からいじめについて考えてもらえるようにするのが目的です。

 平成25年度は試行的に実施したのみでしたが、平成26年度からは本格的に実施し、たくさんの学校からお申込みをいただいております。平成26年度は10校・65コマの授業を実施し、本年度は53校・158コマの授業を実施することになっています(1月25日現在)。

 なお、本年度の途中から、西三河支部管内の学校については、西三河支部の会員に担当していただいています。

子どもたちの反応

子どもたちの反応は、様々です。
 授業の最初に、①いじめられても仕方がない、②いじめは絶対にダメ、③場合によるの三択で挙手してもらうのですが、まず、ここで意見が分かれます。

 もちろん、授業の目的は、いじめは絶対にダメということを分かってもらうことにあるのですが、それを一方的に伝えるだけでは、あまり効果がありません。なぜなら、いじめが良くないということはみんな分かっているはずなのに、現実には存在するというのが、いじめの難しいところだからです。

 そこで、授業では、いじめとは何か、なぜいじめがダメなのか、いじめをなくすためにはどうすればよいかを子どもたち自身に考えてもらうようにしています。

 授業後にアンケートを実施していますが、子どもたちの感想は、意外とシビアです。
 「どうせいじめはなくならないよ」といった諦め切った意見や「きれい事を言うな」といった厳しい意見もあります。
 ですが、そういった批判的な意見にこそ、いじめの根源的な問題点が隠されているような気がします。

 そこで、当委員会では、アンケートの結果を踏まえて、子どもたちの疑問にできるだけ答えられるように、授業案検討会を適宜開催して、授業案を練り直しています。

 一方、いじめられた経験のある子から、「何かあったらメッセージ (注:授業の最後に私たちから子どもたちへ伝えるメッセージのことです)を思い出して勇気を出します」といった嬉しい感想が寄せられることもあります。

 1コマないし2コマの授業で伝えられることは限られていますが、少しでも子どもたちの心に残る授業ができればと思っています。

今後の展望

 当委員会では、今後も、いじめ予防出張授業を県内各地の学校で実施していきます。

 授業実施校も授業担当者も募集しておりますので、会員の皆様にはいじめ予防出張授業のことを広めていただき、興味を持たれた方は、当委員会の学校生活チームに是非ご参加いただければと思います。