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子どもの事件の現場から(273)プログラミングで踏み出す大きな一歩
-研究授業報告会に出席して-
子どもの事件の現場から(273)プログラミングで踏み出す大きな一歩
-研究授業報告会に出席して-
会報「SOPHIA」令和8年4月号より
子どもの権利委員会 委員 鈴木 駿
昨年11月28日、愛知少年院で行われた「研究授業報告会」に、当会を代表して出席させていただくことになりました。
愛知少年院では、昨年度より職業生活設計指導の一環として、直感的にプログラミングを学ぶことができるツール「MESH(メッシュ)」を活用した授業を試験的に実施しています。全国的に見ても非常に先進的なこの取組の報告会には、名古屋家庭裁判所や名古屋地方検察庁、中部地方の鑑別所および少年院などから多くの関係者が招待され、MESHを用いた授業を実際に見学し、活発な意見交換が行われました。
MESHとは、USBメモリほどの大きさのブロック内に、LEDライトやマイク、人感センサーなどのギミックを内蔵した機器です。パソコンやタブレットでこれらのブロックを組み合わせると、それぞれの機能を連動させることができ、直感的にプログラミングを学ぶことができます。例えば人感センサーとLEDライトを組み合わせると、「人が通過するとライトが点灯する」装置を作成することができます。実際の授業では、MESHと身近にある日用品を使って、「日用品を便利なものに変える仕組みを作ってみよう」というテーマで、4人の少年が2人1組となり、仕組みを考え、発表するという手順で行われました。特に印象に残ったのは、障害のある人のために、人感センサーとスピーカーを組み合わせて「目が見えない人が忘れ物に気付ける装置」を作成した少年の発表でした。装置の随所に周りの人々を気遣う優しさが見受けられ、少年の柔軟な発想に感銘を受けました。
さて、プログラミングと矯正教育、一見するとミスマッチな気もします。しかし、プログラミングは、「設定した目標を解決するためにはどのような手段・方法を用いるべきか」を思考することが必要になるので、問題を過剰に大きく捉え、思考をやめてしまう傾向にある少年にとって、問題解決までのプロセスを思考する能力(論理的思考)を養うという点で優れています。また同時に、少年が自分で設定した目標を解決できたという「達
成感」を得ることができるので、とても理にかなっています。
私は、少年と関わるようになって、「達成感」を得るということが少年にとって非常に重要なものだと、強く感じています。実際に少年と面会をすると、少年の口から積極的に何かを成し遂げた経験談が語られることは少ない一方で、失敗談やうまくいかなかったことを耳にすることが多い印象です。そういった自身の経験から、「達成感」を得られないことが、少年の自信の喪失やストレス・フラストレーションの蓄積となり、果ては非行につながっていくのではないかと感じています。そのため、プログラミングを通して、少年自身が設定した目標を自らの力で解決することができたという「達成感」を得ることは、たとえその目標が小さなものであっても、少年にとっては非常に大きな一歩であると感じました。
現在は試験的な導入のため、一部の少年を対象に授業が実施されていますが、愛知少年院としては、今後対象を拡大し、より多くの少年に触れる機会を増やしたいと考えているようです。人員確保や予算などの課題はありますが、少年が大きな一歩を踏み出すきっかけとして、とても有意義な試みだと思いました。

