愛知県弁護士会トップページ> 愛知県弁護士会とは > ライブラリー > 全国一斉生活保護ホットライン及び勉強会開催される

全国一斉生活保護ホットライン及び勉強会開催される

会報「SOPHIA」 平成27年12月号より

貧困問題・多重債務対策本部
委員 生田 晃生

  1.  12月10日に全国一斉生活保護ホットラインが当会を含めた全国の単位弁護士会において開催された。
     これに先立つ同月1日には生活保護ホットライン勉強会が開催され、相談における基礎的な知識やホットラインにおける心構え等を講師の森弘典会員から講義いただいた。
  2.  勉強会においては、ホットラインにおいて生活保護の法律相談において聴取すべき事項や申請の際に持参していくと申請がスムーズに行われるものについて説明があった。
     最近では平成25年12月に生活保護法が改正されたことに伴い、申請手続きの厳格化がなされた。この改正によって原則として所定事項を記載した申請書及び通帳等の添付資料の提出を義務付けているとのことであった。書面を整えて提出することによって申請に対する判断が早期になされるメリットがある。しかし、書面による申請が原則となってはいるが、口頭での申請を一切受付けないということではないので、緊急を要する場合には口頭での申請もできるということを相談者にもきちんと理解してもらうことが必要であるとのことであった。
  3.  また、不正受給に係る徴収金の返還について保護費の天引きを行えるようになった。しかし、保護費の天引きの要件として、①書面による申出②本人の生活維持に支障が無いと福祉事務所が認める範囲でのみ天引きが認められ、具体的に「生活維持に支障が無い」金額とは、単身世帯で5,000円、複数世帯で10,000円程度と考えられているとのことであった。
  4.  不動産の所有については居住用家屋・宅地の所有については認められる。また、車についても、公共交通機関への接続が不便である等一定の要件を満たせば保有が認められる場合もあるとのことであった。
  5.  保護費の支給決定から保護費が現実に支給されるまでの間に若干の時間差があるため、その間の生活費を捻出するために、生活福祉資金貸付制度の利用をすることが考えられるとのことであった。貸付にあたっては、原則として生活困窮者自立支援制度の自立相談支援事業の利用を要件とするとのことであった。この他にもセーフティーネットとして職業訓練受講給付金、雇用促進住宅の緊急入居、国民健康保険税の徴収猶予等様々な制度があるので、これらについては相談者に必要があれば説明すべきとのことであった。
  6.  ホットライン当日は、開始直後から電話が鳴り続け、合計で49件の相談が寄せられた。相談の多くは、生活保護の受給に関する一般的な要件等の問合せであった。しかし、一部には明らかに違法性が認められる事案も含まれており、後日相談を継続しなければならないような事案も含まれていた。また、全国一斉で行っていたためか近隣の県からの電話も入り、その場合には当会会員では対応することができないため、相談者の近隣の生活保護支援ネットワーク等を紹介して対応していた。
  7.  生活保護の受給については、一般に躊躇する発言をする相談者の方が多く、ホットラインに電話をかけることも悩んだうえで電話をかけてきたともらす相談者もいた。そのような相談者の力になることが少しでも出来たのであれば、今回のホットラインを開催したことに意義があったのではないかと感じ、また、今後もこのような活動の必要性を感じる次第であった。