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犯罪被害者支援委員会研修会

会報「SOPHIA」 平成27年12月号より

犯罪被害者委員会
委員 村田 篤紀

日時 12月10日 18:00~20:00
場所 弁護士会館5階ホール
講師 松井 克幸 さん(ぎふ犯罪被害者支援センター理事)

はじめに

 今回の研修は、2部構成となっており、第1部は、ぎふ犯罪被害者支援センター理事であり、特定非営利活動法人犯罪被害者当事者ネットワーク「緒あしす」のメンバーである松井克幸さんのご講演でした。第2部は、松井さん、松井さんが被害者参加をされたときの被害者参加弁護士であった当会の長谷川桂子会員及び岐阜県弁護士会の森本真仁弁護士の対談が行われました。

講演

 松井さんは、平成24年に、実の妹が知人の男にナイフで刺され、財布を奪われて死亡するという強盗殺人事件に遭われた被害者ご遺族です。松井さんには、被害者ご遺族の視点から、犯罪の発生から裁判の終了まで、時系列に従って、起こったことをお話ししていただきました。
特に、二次被害の実情について詳しくお話ししていただきました。マスコミとの関係で大変なご苦労があったようです。
マスコミは、被害者のご遺族に過剰なまでの取材を行い、また、興味本位での報道も行われました。松井さんは、これらの報道に対して抗議を行いましたが、マスコミは、事件の社会的関心が高く報道の必要性があるとの理由で取り合いませんでした。
これらの大々的な報道により、被害者ご遺族は、世間の好奇の目にさらされ、次第に社会から距離を置くようになってしまうとのことです。
次に、被害者参加をしたことについてもお話ししていただきました。
検察官から、「裁判は被害者が知りたい真実を明らかにするためのものではない」と言われ、ショックを受けたとのお話が印象的でした。
また、裁判員裁判は、公判前整理手続により、争点を絞り、証拠を取捨選択するため、争点に直接関係ない事実は捨象されてしまい、例えば被害者の人となりが全く見えないものになってしまう点については不満があるとのことでした。

対談

 第2部の対談では、当会の今枝隆久会員をコーディーネーターに、松井さん、長谷川会員及び森本弁護士から、体験された被害者参加制度について、弁護士と当事者のそれぞれの視点からの意見を聞くことができました。
被害者ご遺族及び被害者参加弁護士は、公判前整理手続に参加することはできません。しかしながら、松井さん達は、毎期日後の近接した日に、検察庁を訪れて、検察官から公判前整理手続の内容について説明を受けていたそうです。
検察官と何度も会って話したことで、信頼関係が構築され、それによって、検察官から詳しく説明を受けられたり、参加制度における参加方法についても意思疎通を図ることができたとのお話が聞けました。

おわりに

 被害者参加制度は、まだまだ新しい制度で事例の積み重ねが十分とは言いがたく実務の運用も流動的です。一つでも多くの事例報告を聞くことはとても有意義なことだと思います。
これからも、一人でも多くの方に、被害者支援の研修にご参加いただき、充実した被害者支援活動を行っていただければと思います。