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全国一斉無戸籍ホットラインが実施されました
会報「SOPHIA」 平成27年11月号より
子どもの権利委員会 委員 山谷 奈津子
1 概要
11月11日、午前10時から午後8時まで、全国一斉無戸籍ホットラインが実施されました。
無戸籍者やその支援者からの相談について、今回初めて弁護士会で電話相談を行うことになり、全国の単位会で実施されました。
2 無戸籍問題とは
無戸籍となる原因は様々ですが、無戸籍問題で一番多いのが、いわゆる300日問題に起因するものであると言われています。
婚姻中に他の男性の子を懐胎し、離婚するに至っても、離婚から300日以内に子を出産した場合には、民法第772条の規定により、生まれた子の父は元夫であると推定され(嫡出推定)、その子は元夫の戸籍に記載されることになります。
しかし、元夫にその子の存在を知られたくないなどの理由から、子の母が出生届を提出しないために、子が無戸籍となって社会生活上の不利益を被るという問題が生じます。これがいわゆる300日問題です。
従前より、無戸籍者については法的な手続が必要な問題でしたが、近年、にわかに無戸籍の問題がクローズアップされ、法務省や日弁連などでさらなる対応策を講じているところです。
3 無戸籍者の現状
無戸籍者は、全国で600人以上が把握されていますが、実際にはもっと多いのではないかと言われています。
ただ、無戸籍であっても、住民票を作成できることが多いので、予防接種を受けたり、学校へ通うことができたりします。このように、問題なく社会生活を送ることができるので、無戸籍の問題はなかなか表に出にくいと言われています。
しかし、結婚するときやパスポートを取得する際は戸籍が必要ですので、戸籍を作るために法的な手続が必要になってきます。
4 無戸籍者に対する法的手続
民法第772条の嫡出推定規定の適用がある場合については、原則として元夫から嫡出否認の手続をとってもらう必要があります。
しかし、嫡出推定が及ばないことがはっきりわかれば、いわゆる「推定が及ばない子」として、嫡出否認の手続を取ることはなく、戸籍上、元夫の子とはしないという取り扱いをすることが可能です。この場合、親子関係不存在確認請求や認知請求の手続を取ることになります。
そして、どんな場合に推定が及ばない子といえるかどうかについては、判例・通説はいわゆる外観説を採っており、例えば、夫が刑務所で服役していた場合、既 に別居していた場合など、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合は、推定が及ばないとされています。
外観説は、いつ別居したかなど外形的な事実から認定していきますが、客観的な証拠がない場合が多いので、証明というレベルでは難しい問題が生じます。時には、元夫に手続に関与してもらい、推定が及ばないと言えるかどうか事情を聞く必要が生じます。
5 相談の内容及び今後について
愛知での相談件数は2件でしたが、全国では25件近い相談が寄せられた地域がありました。
今後も引き続き、子どもの人権相談などを窓口として相談を受け付ける予定です。