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英語講義『日本の司法機関』が開講しました!

会報「SOPHIA」 平成27年10月号より

国際委員会 委員
尾田 知亜記

 名古屋大学大学院法学研究科において外国人留学生を対象とした英語講義『日本の司法機関』(Japanese Judicial Institutes)が、10月8日から開講しました。この講義は、毎年後期に開講され、国際委員会は、例年非常勤講師として登壇する委員を派遣したり、名大チームを作り、非常勤講師となった委員をサポートする等の活動を行っています。

 今年は、中国、タイ、モンゴル、ミャンマー、ベトナム、ウズベキスタンといったアジアからの留学生だけでなく、アルゼンチン、スロバキア、エチオピア、スウェーデンからの留学生も受講しています。受講生は、現地で既に裁判官・検察官・弁護士等として活躍している人も多く、第1回のガイダンスを含めた講義から、多様なバックグラウンドを持つ受講生たちからの質問に端を発して活発な議論がなされました。

 講義の内容は、主に刑事法と民事法に分かれており、刑事法は主として模擬裁判を行うことにより、日本の刑事訴訟手続を学ぶ内容となっています。民事法では、講師の経験した事例を紹介しつつ日本の民事訴訟手続(強制執行手続を含む)を概観するのに加え、併せて家事手続をも学ぶ内容になっています。このほか、裁判所(地方裁判所だけでなく、最高裁判所も訪問します)、検察庁を訪問し、裁判官、検察官から職務内容や日本の裁判所制度、検察庁の制度について講義を受けたり、刑務所を訪問し、刑の執行に関する講義を受けたり、弁護士会を訪問し、会務や弁護士自治に関する講義を受ける等課外授業も充実しており、日本の司法制度について広く学ぶことができる講義内容となっています。

 私は、登録1年目から国際委員会の名大チームに所属しており、今年からは国際委員会委員長の小川晶露会員、同委員の早川尚志会員と共に非常勤講師として、主に民事法の講義を担当しています。最初は、弁護士としての経験も未熟な中、英語で日本の司法機関の説明をすることが全く想像できず、マイクを握る手が震えたり、レジュメを作成するのに深夜まで悪戦苦闘したりしていましたが、小川会員、早川会員をはじめとする国際委員会の委員の方々に助けていただき、最近では、講義を楽しめるようになってきました。

 また、講義資料を作成する際に、各国の司法制度を学び、日本の司法制度と比較することによって、日本の司法制度への理解が深まったり、講義における留学生の質問により、今まで所与のものと考えていた日本の司法制度を再考するに至ったり、とても興味深い経験をさせていただいています。

 例えば、民事法の講義で取り扱った家事調停手続について、日本では、相手方当事者と顔を合わせず、交互に話を聞く方法が一般的に採られています。これは、顔を合わせると感情的になり、冷静に話ができない、相手方当事者が同席していると言いたいことがいえなくなる等の配慮からだと思いますが、他国の目線からは、直接顔を合わせて話し合うことが大切であり、調停期日はその良い機会であるという意見も多く、異なった制度設計がなされている背景には、異なった文化的背景がある可能性があることを学びました。