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子どもの事件の現場から(148) 児童福祉の現場から

会報「SOPHIA」 平成27年10月号より

会員  橋本 佳子

 私は、今年4月から名古屋市中央児童相談所に任期付公務員として着任しました。今回は、児童相談所での仕事内容とそれを通じて感じたことをお伝えしたいと思います。皆さまもご存知の通り、児童相談所では、児童虐待を始め、原則18歳未満の児童に関するあらゆる相談を受け付け、援助しています。私の業務は、家事審判の申立てを始めとする法律事務が中心となりますが、一時保護への同行、保護者及び子どもとの面談、関係機関への訪問、ケース会議への参加など、ケースワーカーと共に動くこともあります。

 児童相談所は、支援する機関でありながら、介入という方法を用いなければならないことがあります。特に介入の場面では、家庭という最も私的な場所へ一方的に立ち入ります。福祉的援助を求めていない保護者から、激しい抵抗や抗議を受けることも珍しくありません。介入方法は、その後の家族再統合へのプロセスにも影響することがあります。子どもの生命、身体の安全確保を最優先としつつ、保護者にどのように対応するべきか難しい場面もあります。

 また、保護者や子どもと関わる中、辛い場面に向き合うこともあります。

 一時保護をした子どもの保護者の中には、虐待の事実を一向に認めなかったり、虐待行為を正しい躾と主張し続けたり、逆に子どもは要らないと言って、児童相談所はおろか、子どもに全く関わろうとしない方もいます。虐待によって傷ついている子どもに、事実を隠し続けることはできません。どうこの事実を伝えたら良いだろうか、今伝えることが子どもにとって本当に良いのだろうか、今後どうやって保護者や子どもに働きかけるか等、連日行われるケース会議で他の職員と共に頭を悩ませています。

 「子どもは、虐待を受けた事実に直面しなければならない時がいつか来ます。その時、子どもを支えることができるよう、今できることを考えましょう。」

 ある保護者への今後の対応に悩む中、一緒に支援する職員から出た言葉でした。支援する側の、事実に立ち向かうことの難しさ、子どもが事実に立ち向かわなければならない時の、子どもを支えることの大切さとその難しさを教えられた瞬間でした。

 子どもの福祉を実現するために何ができるか、悩ましい場面に直面することが多い毎日ですが、急速に成長し、力をつけていく子どもの姿や、子どものために変わろうと努力する保護者の姿に心を打たれることもあります。

 多くの困難を抱える子どもを社会で支えるためには、多くの方々の支えが必要不可欠です。子どもの福祉が実現されるよう、多くの方々との連携を強化しながら、職務に取り組んでいます。