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9.5 集団的自衛権行使のための違憲立法反対愛知大集会・パレードの報告

会報「SOPHIA」 平成27年9月号より

憲法集会実行委員会 実行委員
安井 一大

  1.  当会は、1月17日、6月14日の集会パレードに引き続いて、9月5日に「集団的自衛権行使のための違憲立法に反対する愛知大集会・パレード」を開催した。突き抜けるような爽やかな秋晴れが集会の成功を予感させたとおり、前回の約4000人を上回る約6000人の参加者が集会に参加し、大変な盛り上がりをみせた。国民の法案に対する関心や危機感の高まりの現れである。
     前回同様、中島万里会員と加藤良登会員が司会を担当。以下、プログラムに沿って大集会・パレードの様子を報告する。
  2.  最初は、村橋泰志実行委員長からの開会挨拶である。自衛隊派遣の実質的決定権者がアメリカではないかという構造的な問題点や、憲法9条改正手続を踏まない政府の姿勢に立憲主義への危機感を示された。最後に国民の声を高めて政府を追い込むしかないと、聴衆に活力を与えた。
  3.  次は、リレートークである。
     1人目は、経済学者安藤隆穂氏である。安藤氏はまず、日本軍に親を殺された隣国の友人との話を挙げ、戦争後の禍根による悲痛を語られた。また、「戦争法案は研究の自由に対する暴力」や「わが軍の下での怯えた安全を望まない」など、柔らかい声質だが短いフレーズで本法案へのアンチテーゼを語られたのが印象的だった。
     2人目は、生活協同組合コープあいち常勤理事の箕浦明海氏である。「平和とより良き生活を求める」ことを使命に掲げて設立された生協の立場からのお話である。本法案について、内容にも審議の進め方にも疑問を感じ、国民を戦争に巻き込むものだとして危機感を抱いていると述べ、最後に聴衆に掛け声を求めて参加者の一体感を作った。
     3人目は、中京大学教授の大内裕和氏である。大内氏は平素から奨学金問題やブラックバイト問題に取り組んでおられる。現在日本では、大学生の奨学金利用者が全体の52.5%に上るが、本法案成立により困難になるであろう自衛隊員確保のため、任官を条件とした学費や奨学金免除を制度化するなどして経済的徴兵制が実現するとの危惧感を示された。力強くかつ説得なスピーチだった。
     4人目は、日本福祉大学学生石原史歩里さんである。「福祉」とは全ての人が幸せに暮らすことを目指すことだが、現在日本では軍拡の反面で社会保障費が削減されるなど、「福祉」が追い込まれていることを指摘。また、従前政治に無関心だった学生の関心の高まりを報告。今後、日本に民主主義がより深く根付くことへの期待を感じさせた。
  4.  次は、国会議員の方々のスピーチである。
     まずは、大塚耕平、山尾志桜里、斎藤嘉隆、鈴木克昌、大西健介、近藤昭一、伴野豊、古川元久各議員を代表し、大塚議員からのスピーチである。
     元最高裁長官や元内閣法制局局長などが違憲だと言っているのに、その重みを意に介しない政府の姿勢に対する疑問や、自国への武力攻撃が無いのに他国への武力攻撃を許す集団的自衛権を専守防衛であるとする矛盾を看過できないなど、終始、非常に力のこもった発言をされた。
     次は福島瑞穂議員からのスピーチである。集団的自衛権や後方支援の憲法9条違反、イラク特措法に基づく空輸活動の名古屋高裁での違憲判決との関係などの法理上の問題点を指摘。また「戦争をするのに平和という言葉を使うな」「アメリカのリスクの下請法案をしてはならない」「世界中の人々を敵に回してはならない」など、メッセージ性ある言葉をちりばめて廃案を強く訴えかけた。
     最後は、本村伸子議員からのスピーチである。本村議員もイラク特措法に基づく空輸活動の名古屋高裁判決や、後方支援の武力行使との一体化を指摘。また、これに対する政府の回答の不十分さについて、「誤魔化しの答弁で平和憲法を壊させるわけにはいかない」と、怒りを込めて訴えかけ、聴衆の共感を呼んだ。
  5.  次の集会宣言は、安井が担当した。
    集会宣言_安井
     緊張したが、セリフを読んでよい分、前回の漫才よりは気が楽であった。今回はどんなボケをするの?という声を多方面から頂いたが、情勢を踏まえ、今回は宣言役に徹した。要所要所で聴衆が盛り上がる雰囲気に、国民の危機感と反対の強い意思を肌で感じた。
  6.  そして、川上明彦会長の出発宣言である。「戦争は最大の人権侵害である」、安保法案は「立憲主義違反、憲法違反である」という力強い言葉や、「明治神宮外苑を歩く学徒出陣や特攻隊員が突っ込んでいく姿を見ると必ず涙する」など共感を呼ぶ話をされた。最後に、「この戦後70年の作られた安全・平和な日本を守る歴史を作る。歴史に立ち会おうとしている。頑張っていこう」と、聴衆の機運を高められた。
  7.  各スピーチ・挨拶後、久野由詠会員からシュプレヒコールの仕方などの説明があったのち、錦方面と矢場町方面の2コースに別れてパレードを行った。パレード末尾には、若者が参加しやすいよう、若者が主導するゾーンも設けられた。
     私は錦コースに参加した。1月、6月のデモにはいなかったような世代がデモに参加して私の前後を歩いていたのは、象徴的である。「安保法案に異議あり!」などのコールを読み上げる女性の声が栄のビル街に綺麗に響き渡る様子は、その声質の柔らかさと、列をなして車道を歩く行動自体の力強さが調和して、絶妙なバランスのパレードだと感じた。
     本法案は9月17日に参議院本会議で採決された。しかし、本集会・パレードを含めた反対運動が民主主義の覚醒の契機となったことは間違いないであろう。
    本集会・パレード1
    本集会・パレード2