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サマースクールは進化し続ける! ~2015年サマースクールを終えて~

会報「SOPHIA」 平成27年8月号より

法教育委員会 委員長
古澤 仁之

1 サマースクール概況

 今年のサマースクールは、すべての企画の定員が320名のところ、申込総数が278名、実参加数が260名と盛況であった。新聞記事の掲載等による時機に適った広報が功を奏したことも大きいが、これまでの積み重ねにより、夏の恒例行事として知名度が上がってきているのではないか、という手応えを感じた。参加した契機について子どもたちの声を聴くと「親が申し込んだ」という答えも多かった。「小学生向けの刑事模擬裁判」では、例外的に保護者の傍聴が認められているが、子どもに貴重な体験の機会を与えたいと望む保護者が、発言する子どもを見つめる視線は非常に熱かった。サマースクールは良い教育の機会であるという保護者の口コミの力はあなどれない。ぜひ次年度以降につなげていきたい。

2 企画を振り返って

 今年は、昨年に倣い、法廷傍聴、体験講座(弁護士に挑戦!、ここだけの話、クイズ選手権、ティーンコート)、そして刑事模擬裁判(小学5・6年生、中高生)を企画した。
 「弁護士に挑戦!」は、結果としては弁護士側の5勝1敗。ディベーター役の弁護士が、設例上の形勢不利を、それぞれの個性を発揮して覆し、様々な手法で生徒たちを深い議論に巻き込んでいく。大人げなく勝とうとする姿勢に感動する(ちなみに、私事で恐縮だが、企画に参加した長女の前でヘルプ役を演じ、親の背中を見せるはずが失敗した)。
 「ここだけの話」は、やはり裁判官、検察官が人気だ。広報活動に力を入れている各庁の姿勢も大いに見習わなければ、と感じた。
 「クイズ選手権」は、日頃と人格が違うのではないかと思う程にハイテンションで見事な司会をはじめ、雰囲気を盛り上げるための仕掛けが盛りだくさんだった。
 「ティーンコート(子ども裁判所)」は、処分結果の柔軟性が面白い。生徒たちが、それぞれの役割をしっかりと果たし、バランスのとれた処分結果を出すために悩んでくれた。
 「小学生向けの刑事模擬裁判」は、オリジナルシナリオに挑戦した。「赤ずきんちゃんのその後事件」と題した模擬裁判劇の完成度は高く、エンターテイメントの域に達しているように感じた。わかりやすく、面白く問題を提起する。子どもたちが自ら考え、評議し、自分の意見を堂々と発表する。本当に満足そうな子どもたち、保護者の姿が印象に残った。
 「中高生向けの刑事模擬裁判」は、模擬裁判劇の配役、キャラクター設定が秀逸で、生徒たちの関心も非常に高い。目撃証人がつい被害者に不利な証言をすると、すかさず生徒が「あ~あ、言っちゃったよ」とつぶやく。休憩時間に、被告人役と被害者役の弁護士が談笑していると、生徒たちが顔を見合わせながら「なんだ、実は仲いいんじゃん」と笑う。補充質問では、企画側の意図をすべて見破るかのような鋭い質問が飛ぶ。模擬裁判の醍醐味が体現できたと思う。

3 来年に向けて

 サマースクールは、役者が揃った贅沢な企画だと思う。必ずしも正解がない問題について、自ら考え、意見を述べ、周りの意見を聞き、多数決だけに頼らず、できる限り少数者の意見を尊重して、皆が納得する結論を導くように議論する。楽しみながら法教育の理念を学ぶことのできる企画を送り続けたい。