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子どもの事件の現場から(256) 少年の居場所
会報「SOPHIA」令和6年11月号より
会 員 松 波 伸 一
1 国選当番日に16歳の少年を担当することになりました。少年は県外で建造物侵入、窃盗をし、県外で逮捕・勾留されたのち、少年の住居のある名古屋少年鑑別所に移送されてきました。
私は、家裁送致後から担当することになりました。勾留段階の国選の弁護人にすぐに連絡を取りましたが、被害弁償、環境調整ともに未了とのことでした。
2 少年と初回接見をしたときの第一印象はまじめな子で、とても犯罪をするような子には見えませんでした。
よくよく少年に話を聞いていると、実家では虐待を受けていたこともあり、実家に居場所がなく、家出をしてしまい、ショッピングセンターで寝泊まりしながら、隠れて生活していたとのことでした。
少年の実家に連絡をしましたが、少年を受け入れることはできないとのことで、少年も家には帰りたくないとのことでした。
3 調査官に現時点での意見を聞くと、少年が帰る場所がない以上、少年院送致もやむを得ないとの意見でした。
しかし、少年は、早期に働いて被害弁償をしていくと共に、できれば高校に通って勉強したいと話していました。少年に保護観察処分の判断が下される環境を作るため、再非行防止活動をしているNPO法人に協力を求めました。同法人の理事長と共に少年と面会し、少年と話してもらった後、少年の受入れをお願いすることができました。
同法人では、少年に受け入れ先のアパートを用意しており、就労支援等が行われています。また、1日1回面談があり、就職活動の状況や生活での不安等を話す機会があります。就労先の候補は、法務省・厚生労働省の協力雇用主であり、比較的速やかに就労先を見つけることができると思われました。
4 同法人においては、少年の受入れには、試験観察処分ではなく、保護観察処分となることが必要でした。事前に調査官、裁判官にも同法人での受入れが可能であること等の状況を逐一報告し、保護観察処分とする必要性を訴えました。
少年審判には、NPO法人の理事長にも同席してもらい、少年が保護観察処分となった場合には、少年を受け入れる環境が整っていることを付添人から主張しました。
5 少年は無事保護観察処分となり、その後就労先及び就学先を見つけることができました。
付添人としての活動は終わりましたが、現在は、よりそい弁護士制度を活用し、未了である少年の被害弁償等のために活動しています。
月1回開かれている少年、児童相談所、保護観察所、NPO法人関係者との話し合いにも参加し、被害弁償の方法やその他の法的支援について援助できるようにしています。
6 私は少年事件に興味を持ち、弁護士を志すようになりました。初めての少年事件で右も左もわからない中でしたが、少年にとってより良い環境につなげることができてよかったと感じています。
今後も、社会の中で居場所がないことが一要因となり非行に走ってしまう少年を、付添人として支援し、少年の居場所づくりができるよう、活動していきます。