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「東日本大震災対策本部」設置される

会報「SOPHIA」 平成23年5月号より

東日本大震災対策本部 本部長代行
総務委員会 委員長   堀 龍之

1 素速い東日本大震災対策本部の設置

 3月11日14時46分、宮城県沖の海底を震源とする大地震が発生した。地震の規模はマグニ チュード9.0と発表され、我が国の観測史上最大規模の地震であった。896年の貞観地震(マグニチュード8.4と推定される)と同様の大津波が発生し、 岩手県から福島県までの広範な太平洋岸地域が壊滅的な被害を受けた。また、大津波などにより福島第一原発が炉心冷却不能状態に陥り、深刻な放射能汚染を引 き起こしている。

 日弁連では大震災発生当日に対策本部を設置したが、当会でも齋藤会長(当時)以下の執行部は、この大震災により未曾有の被害を受けた東北地方の支援に会を挙げてあたる方針を立て、3月22日に東日本大震災対策本部(以下「対策本部」という)を設置した。

 平成19年10月に制定された「愛知県弁護士会災害対策本部の設置及び運営に関する規則」(規則186号)に基づき設置要綱を制定し対策本部が設置されたものである。

2 対策本部の顔ぶれ

 前記規則には、対策本部は、会長、副会長、総務委員会委員長、法律相談センター運営委員会委員長、その他会長の指名する会員若干名で組織し、会長を本部長 とすると規定されている。会長は、総務委員会災害対策部会員や次年度の当会役員、中弁連関係者などから10名を指名し、総勢18名が対策本部員となった (その後関連委員会委員を追加選任予定)。

3 対策本部の目的

 対策本部の目的は、要綱によると、東日本大震災の復興活動を支援するため、前記規則第4条各号に掲げる活動(被災地弁護士会への支援活動、法律相談担当弁 護士候補者・派遣弁護士候補者の選任等、日弁連・各地の弁連・他会との情報交換・連絡・調整、被災県民の援助等々)を行うこととされているが、災害復興支 援目的で対策本部を当会が設置したのは初めての経験であり、具体的な活動は手探りで始めるしかない状態であった。

4 対策本部始動

 対策本部が設置されたからには、できるだけ早く効果的な支援活動を実行したいというのが本部員共通の願いであった。3月28日に第1回本部会議を開催し、各自が被災地支援に対する熱い思いを披瀝した。そこでは、異論もなく、次の方針が確認された。

  • ① 被災地に会員を派遣して被災状況を見聞し、適切な支援方法を検討すること。
  • ② 被災者の様々な法的問題の相談にあたること。

 ①については、現地の状況を見ながら、日弁連や現地の弁護士会などと連携してできるだけ早く現地派遣を実現することとし、②については、とりあえず愛知県に避難されている被災者の無料電話相談をすみやかに開始することとなった。

5 無料電話相談の開始

 愛知県庁や名古屋市役所に確認すると、愛知県下の公営住宅826戸が避難先として提供されてい ることが分かった。4月18日から「愛知県在住の東日本大震災被災者の方に対する無料電話相談」を開始することとし、全会員に向けて無料電話相談担当者の 募集を行った。多数の会員がこれに応募され、4月18日には予定通り無料電話相談を始めることができた。当面5月31日までの月曜から金曜まで、10時か ら17時までを3つの時間帯に区分し、それぞれ2名、合計6名の会員が無料電話を設置した弁護士会館に待機するという方法とした。この無料電話相談は、法 テラスとの共催により実施している。

 愛知県、名古屋市、マスコミにも広報をお願いしてい るが、未だ十分に被災者の方々に認知されているとは言えないようで、相談の電話がかかってこない日もある。6月以降は、受付時間帯を午後のみとし、担当会 員の事務所に相談電話を転送するなどの変更をした上、無料電話相談を継続していく予定である。

6 被災地への弁護士派遣実施

 無料電話相談の開設作業と並行して、被災地への会員派遣を検討していたところ、4月中旬ころ日 弁連から具体的な派遣への協力要請を受けた。被災地弁護士会は、大震災直後から全力で被災者の法律相談にあたっていたが、会の規模に比して余りにも被災地 が広範で被災者が多数なため、日弁連に応援を求めていたことがそのきっかけの一つであった。

 相当の混乱はあったものの、最終的には4月29日から5月1 日の3日間にわたり、全国から会員100名を被害の最も大きな宮城県に派遣し、約100か所の避難所で無料法律相談を実施することとなった。このプロジェ クトは、日弁連が法テラスと協力して実施することとなり、派遣弁護士の旅費などは法テラスが負担することとされた。

 日弁連の要請に応えて相当数の会員を派遣できる弁護士会は限られるが、当会は10名(3日間で延べ30名)を派遣することとした。会員に向けて派遣弁護士の募集をしたところ、すぐに多数の会員がこれに応募され、そのうちから10名を現地派遣の第一陣とした。

 現地派遣の模様は別項をご覧いただきたい。

7 今後の活動方針

 5月20日時点において大震災による死者と行方不明者は2万4千人を超え、避難を続けている方は10万人以上である。

 被災者が直面する法的課題は広範かつ深刻であり、法律相談や 各種立法提言、原発損害賠償問題等への対応が不可欠である。対策本部では、日弁連、中弁連、被災地弁護士会、法テラスなどと連携をとりながら、適切な被害 者支援策を講じていく。第一陣に続き、当会会員の被災地派遣も検討している。