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子どもの事件の現場から(225) 巣立ちの春 ~18歳一斉成人に思うこと~

会報「SOPHIA」令和4年4月号より

子どもの権利委員 委 員
福 谷 朋 子

 今春、私が後見人であった未成年者4人全員が成人となりました。そのうち3人は、民法改正(成人年齢引下げ)に伴い4月1日をもって一斉に成人となったものです。
 死別や離別、虐待などさまざまな理由で親が親権を行使することができない、または行使することが適切でない子どもが存在します。在学中は養護施設や里親のもとで手厚い監護を受けることができますが、高校を卒業したり、進学しなかったり、中退したりした子は養護施設で生活することはできず、たちまち自立を求められます。未成年後見制度は、突然社会に放り出されることとなった子どもに、大人が寄り添い、困ったときの相談相手や親権者としてのトラブル対処ができるという意義を有しています。単身生活をしている年長の未成年者ほど後見人の必要性は高く、高校卒業など自立を迫られるタイミングで後見人が選任されるケースが多かったように思います。私が担当した未成年者の多くも、学校を出た後の自立支援のために未成年後見の申立てがされました。そのため後見人でいた時期は数か月~1年少しと短期間の子がほとんどでした。ただそんな短い期間でも、親身になってくれた大人に勧誘されて毎月の給料では払っていけない契約を締結したり、給料を使い切って後見人が管理するお金(施設入所中に支給された児童手当を施設が貯めていてくれたもの)がなければ生活できなくなったり、仕事が続けられなくなって職住を一気に失ったり、精神不調をきたしたり、それぞれの子がトラブルに直面しました。その都度、未成年者取消権を行使したり、本人と話し合って必要最小限の生活費を振り込んだり、行政への相談に付き添ったり、病院に同行したりしてきましたが、今後18歳以上の子に対してはそれもできなくなります。
 18歳といえば、高校在学中です。高校を卒業し自立するにあたり、今後は、後見人が選任されることはありません。ひとりで生きていくには彼らは若く、さまざまなトラブルに巻き込まれます。今後は不用意に契約をしても、手元にお金がないときに気軽に借入れをしても、これを取り消す術はありません。成人年齢引下げによるプラスの面もあるのだとは思いますが、まだ未熟な彼らが社会で食い物にされることのないよう、さまざまな手当てが検討されてしかるべきであると考えます。
 彼らの巣立ちには別の感慨もあります。私は理想的な後見人とは程遠く、ラインで未成年者と本気で喧嘩して「ブロ削します」と言われ(検索したところ「ブロック」して「削除」することだそうです)、しばらく連絡がつかなくなってしまったり、深夜のラインに気付いていながら敢えて開かずに寝てしまったり、説教じみたことを言って未読無視されたりすることがしばしばありました。今後は知り合いのおばちゃんとして、成人になっても困ったときに相談してくれれば良いなと思い、そのように伝えてありますが、全ての子とそんな関係性が築けたかどうかは正直自信がありません。
 現在19歳の我が子も含めて5人の巣立ちを見送る春となりました。一抹の寂しさとホッとした気持ち、そして大丈夫かなという心配も抱えつつ、細い糸が切れないといいなと思っています。