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「子どもの権利」の説明できますか?
~子どもの権利学習の実践~

子どもの事件の現場から(224)
「子どもの権利」の説明できますか?
~子どもの権利学習の実践~

会報「SOPHIA」令和4年3月号より

会 員 間 宮 静 香

 日本は、1994年に子どもの権利条約を批准しましたが、みなさんは、「子どもの権利ってなに?」「子どもの権利条約の一般原則ってなに?」と聞かれたとき、答えられますか?
 子どもの権利条約の正式名称は「児童の権利に関する条約」です。「児童」と聞いて、高校生が「自分のこと」とは考えませんよね。そこで、子どもの権利について理解している人たちは、Convention on the Rights of the Child そのままに「子どもの権利条約」と呼び、それが定着しています。
 子どもの権利条約42条は、大人と子どもに対して、条約を周知啓発する義務を国に負わせていますが、周知啓発は不十分で、まだまだ子どもの権利条約は知られていません。
 他方、一部の地方自治体が子どもの権利条約に基づく子どもの権利条例(名称は子ども条例等様々)を施行しており(県内では9自治体が制定)、条例の広報啓発義務に基づき、子どもの権利を学ぶ学習、いわゆる「子どもの権利学習」を独自に行っているところもあります。
 豊田市では、豊田市子ども条例に基づき、小学校1年生・3年生・5年生・中学2年生の授業の中で子どもの権利を学ぶプログラムがあります。これは、教育センター機能を持つ青少年相談センター「パルクとよた」等が中心に考えたものに、子どもの権利救済機関である子どもの権利擁護委員が意見を述べて冊子と指導案を作成したもので、それに基づいて、教師が授業を行っています。さらに詳しく子どもの権利を学びたいという学校向けには、子どもの権利擁護委員が出張で授業に行きます。
 小学3年生には、「けんりってなあに?」というパワーポイントを使って授業を行い、日常生活で権利が守られていない場面について考えてもらいます。小学5年生には、守られてほしい権利や守られている権利を考えてもらうワークショップ、中学2年生には、子ども条例の条文を作ってもらっています。
 授業で「いじめられない権利」の話をして「『いじめちゃダメ』ではなく、いじめられていい存在の人なんていないよ」「暴力を受けない権利」の話をして「どんな理由があっても暴力を受けない権利があるよ」という話をすると、その後いじめや虐待の相談が、子どもの権利擁護委員への窓口であるとよた子どもの権利相談室「こことよ」に入るようになります。
 しかし、いくら子どもに権利があることを伝えても、権利の実現を支援する大人がいなければ、子どもの権利は絵に描いた餅です。
 「意見を言ってもどうせ大人は聞いてくれない」そんな感想を中学生からもらってから、まずは、大人向けの子どもの権利学習を実施しなくてはならないという思いを強くしました。
 そこで、名古屋市子どもの権利相談室「なごもっか」の子どもの権利擁護委員に就任後、さらに積極的に大人向けの子どもの権利学習を実施しています。
 名古屋市内の実施であれば、講師料は無料です。PTAや地域の集まり等で、ぜひ、ご利用いただければと思います。もちろん、子ども向け子どもの権利学習も大歓迎です。
 ちなみに、子どもの権利条約の一般原則は、①差別の禁止②子どもの最善の利益の保障(子どもにとって最もよいことを選ぶ大人の責務。ただし、子どもの意見を尊重し話合う相互交流が大切)③生きる権利・発達する権利の保障④子どもの意見表明権の保障(意見を聴く機会の提供)です。みなさん、ご自身の子どもや関わる子どもに子どもの権利を保障していますか?